ファイナンス 2024年8月号 No.705
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-)になります。-を作り出します。2-)です。2-は弱アルカリの海水の中では1割程度しか含まれておらず、これが反応に使われてしまうと、2-の濃度を元に戻そうとする作用が働きます。どCO3うなるかと言いますと、CaCO3という固形の炭酸カ2-の濃度を元に戻ルシウムの粒子が溶けることでCO3そうとするわけです。る生態系の反応、こういった観測を統合的に行っていくことが重要になってきます。もし地球上に大気がない場合、大気から降り注ぐエネルギーはそのまま宇宙に帰っていきますので、地球の平均気温は約マイナス18℃程度になります。今現在、適度に温室効果ガスが存在してくれているおかげで、15℃という地球の平均気温になっています。太陽からのエネルギーの一部が地面に帰ってくるという温室効果です。パリ協定で大気中のCO2をはじめとする温室効果ガスの増加による平均気温を「プラス2℃」に抑えようとしています。これは、15℃に2℃加えた17℃を意味します。しかし、これまで通りにCO2が使われ続けると、プラス2℃には収まらない。そのため、今後、さらに厳しい温暖化が懸念されています。ところが、温暖化の影響は、場所と季節によって大きく異なります。北極域では温暖化の影響が非常に強く出ており、北半球平均の2.7倍です。また、夏と冬では、特に冬が暖かいといったような状況がIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)の1.5度特別報告書にも報告されています。実は、同じ極でも南の極である南極はこれまで温暖化に応答している様子が観測されてきませんでした。ところが、2015~2016年頃から海氷が減少する様子が衛星から観測されるようになってきました。いよいよ温暖化の波が南極周辺にも押し寄せている可能性があります。南大洋は今、2つの問題に直面しています。それは「海氷の減少」と、もう1つのCO2問題と呼ばれる「海洋酸性化」です。海氷減少に関してグラフを見ますと、北極は右肩下がりでどんどん減っています。一方で南極は数年サイクルのような周期で増えたり減ったりしているのが2014年頃まで続いているのが分かります。しかし先ほども述べましたように、2015~2016年以降、南極周辺の海氷も急激に減少を始めました。その減少速度は、北極を上回ることが衛星観測から明らかになってきました。それから、もう1つのCO2問題と呼ばれる「海洋酸性化」についてです。実は、CO2は海水に溶けると、存在しうる形態が3つあります。1つはガス状のCO2であり、2つ目が水と反応して-)であり、3つ目が炭酸イオ炭酸水素イオン(HCO3ン(CO3この存在割合というのは、海水のpH(イオン濃度指数)によって決まってきます。現在、表面海水の平均的なpHは8.1で、弱アルカリ性です。この状態でCO2が海洋に溶け込みますと、H2Oと直ちに反応を起こして、最も安定した形である炭酸水素イオン(HCO3このときに、水素イオンH+を生成するのです。となると、水素イオン濃度が増加するということになり、pHは酸性の方向に傾いていく。これを海洋酸性化と呼んでいます。では、海洋酸性化が一体どういう点で深刻なのかというと、それは生物への影響です。CO2が海水に溶け込んでH2Oと反応すると、-と水素イオンH+が生成されますが、この炭酸HCO3系には緩衝作用という作用、すなわち増えた濃度を元に戻そうという作用が働きます。この増えたH+を減らすためには、周辺にある炭酸2-と反応して、弱アルカリ性で最も安定なイオンCO3形であるHCO3CO3海水中に存在しているCaCO3はほぼすべて生物が作り出す骨格や殻であり、例えば貝類、エビ、カニなどの甲殻類の生物への影響が懸念されるわけです。4.世界の海面水位上昇の将来予測と南極氷床海水準は今現在もミリメートル単位で上昇中で、日本周辺ではだいたい年間で3.5ミリと見積もられています。2.CO2による温暖化の仕組み3.南大洋が直面する2つの問題 54 ファイナンス 2024 Aug.

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