りがとうございます。今日は南極地域観測の現状と意義について、7つの項目に分けてお話しします。1つ目が自己紹介、2つ目が南極観測事業の成り立ちと政策、3つ目が地球温暖化と南極、4つ目が第66次で何をする?:重点観測、5つ目が第66次で何をする?:昭和基地、6つ目が強力な支援組織である海上自衛隊、7つ目が南極観測隊長を務めるにあたって、となっています。海洋極域、特に北極あるいは南大洋は環境の変化に対する反応が激しいエリアです。そういった極域の環境の変化に対して、そこに生息する生物たちがどう反応しているのか、といった研究も併せて行なっています。こうした分野が生物地球化学という分野です。私は最初から研究者になろうとか、大学院博士課程はじめに東京大学の原田尚美と申します。ご紹介いただきあ自己紹介私の専門分野は生物地球化学で、古海洋学という古い時代の海洋環境を復元する研究をしています。具体的には、海底の堆積物に記録された生物由来の有機化合物をマーカーとして使用します。海底堆積物は表面が最も新しくて、深くなればなるほど古い時代の記録が保存されているタイムレコーダーのようなものです。堆積物中のバイオマーカーを分析することで、過去の海洋環境を復元し、自然変動による気候変動の度合いを理解する研究を行っています。に行こうと思っていたわけではなく、実は修士の卒業後の就職も決まっておりました。私が所属していた研究室は海洋のフィールドワークを中心に研究している研究室でした。指導教官に頼み込んで、初めて先生と一緒に赤道の研究航海に参加した時に、研究航海の素晴らしさを知ったのです。みんなで連携してサンプルを取り、分析・解析をするということに大変感動して、決まっていた就職を断り、博士課程に進学するということを決めてしまいました。そして33年前、博士課程の1年生の時に突然チャンスがやってきます。国立極地研究所から指導教官に対して「南大洋で観測をするので、ぜひ手伝ってくれる学生を出してくれないか」と申し出が来たのです。当時、日本隊において南極に隊員として行った経験のある女性は1人しかいない状況です。男子学生がみな断ったことを小耳に挟んだ私は、渋る指導教官を説得して、第33次の南極地域観測隊の一員として行かせていただくことになりました。南極は学生にとって、見るもの、やること、すべてが新鮮です。こんなにワクワクする研究を行う仕事はなんと楽しいのだろう、これを職業にするしかない、と思いまして、この時にようやく研究者になることを決意し、今に至っております。自然を相手にする研究者としては、楽しい時間と大変な時間の比率はおおよそ1対9です。そして大抵、計画通りに進まず、辛い時間の方が長いですが、新たな知を探求する研究職という職業を選んだことで、大変ワクワクしながらお給料をいただけているという点においては、大変良い選択だったと思っています。講師演題 52 ファイナンス 2024 Aug.令和6年度職員 トップセミナー原田 尚美原田 尚美 氏 氏(東京大学 大気海洋研究所 (東京大学 大気海洋研究所 国際・地域連携研究センター 教授) 国際・地域連携研究センター 教授)南極地域観測の 南極地域観測の 現状と意義現状と意義令和6年5月8日(水)開催
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