ファイナンス 2024年8月号 No.705
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2023202220212020201920182017201620152014201320122011201020092008200720062005(出所)総務省20042003 ファイナンス 2024 Aug. 37図表3 共同発行債発行額の推移(兆円)2.01.51.00.5シ団引受方式入門*6) 年限が違う場合はモデル等を用いて補間した金利を用います。*7) 下記のウェブサイトでは、「発行団体に災害等に伴う不測の事態があっても、遅滞なく元利金償還を行うため、連帯債務とは別に各団体の減債基金の一部を募集受託銀行に預け入れる形で流動性補完を目的とするファンドを設置しています。具体的には、37団体合計で、その年度において最も元利金支払の額が多い月の元利金支払額の1/10程度の額を積み立てることとしています。」(p.1)としています。詳細は下記をご参照ください。https://www.chihousai.or.jp/03/pdf/01_04_02.pdfしていくことで、事務作業を単純化できるというメリットがあるとも指摘されています。マーケットを予測して起債することは簡単なことではないため、むしろ定期的に発行してしまうことで、発行タイミングを分散できるというメリットも指摘されるところです。プライシングのタイミングの違い地方債の調達コストとなる金利は、前述のとおり「リスク・フリー・レート+スプレッド」に分解されますが、投資家の需要等を考慮し、まずは「スプレッド」を定めます(この点は主幹事方式でもシ団方式でも同じです)。リスク・フリー・レートは同じ年限*6の国債の金利を用いますが、その国債の金利を定める上で、主幹事方式の場合、当日の9時半や10時のBBの板情報を用います(BBの板については服部(2023)の3章を参照してください)。一方、シ団引受方式だと、前営業日のBBの引け値をリスク・フリー・レートとして用います(ただし、東京都のように当日のBBの板情報を使うケースもある点に注意してください。)。ここから、シ団引受方式について具体的に考えるため、代表的な事例である共同発行市場公募地方債(共同発行債)と東京都債を取り上げます(東京都債は次節で説明します)。共同発行債は、2003年に発行が開始された市場公募地方債であり、多くの地方自治体が連帯して債券を発行する仕組みです。現在、共同発行債は毎年1兆円程度の発行規模を誇り、地方債市場では最大規模といえます。具体的には、各自治体が調達したい金額を持ち寄り、市場公募地方債を発行することで、多くの自治体が共同発行債を通じてファンディングできる仕組みが取られています。図表3が共同発行債の発行額の推移です(共同発行債は毎月発行されています)。共同発行債の発行額決定のプロセスは、具体的には、秋から冬にかけて、各自治体が共同発行債を経由してファンディングしたい額を持ち寄り、協議を経て発行額が決まります。共同発行債では、毎月10年債が1,000億円程度発行されており、その規模から地方債市場では注目が高いものの一つといえます(東京都など参画していない団体もいます)。発行スケジュールについては、毎年年末ごろに地方債計画において共同発行債の大枠が公表され、翌年4月ごろに総務省のウェブサイト等を通じ、具体的な発行スケジュールや各自治体がどのくらい調達するかの詳細が開示されます。共同発行債では、月ごとにどの団体がどれくらい調達したいかが公表されています(図表4を参照)。一般的に投資家は各共同発行債個別の違いを認識していないと指摘されますが、各債券は各自治体に紐づいており、ある投資家が購入した資金は、ある団体に振り込まれることで資金調達がなされます。共同発行債は各団体が連帯責任を負うとともに、何かあった場合に備えファンド(流動性補完措置)*7を事前に拠出するなど、安全性を高める工夫がなされています。共同発行体の参加者は市場公募債を発行している自治体ですが、例えば東京都など共同発行債に参加していない自治体もいます。また、共同発行債には通常債とグリーン債がありますが、債券の種類によっても参加団体が異なります。3.共同発行債3.1 共同発行債とは

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