*2) ASEAN+3マクロ経済リサーチオフィス。ASEAN+3地域経済のサーベイランス、CMIMの実施を支援するなど、ASEAN+3の財務プロセスにおいてメンバーの検討や意思決定を支援する国際機関。の財務大臣・中銀総裁代理会議で、日本から、CMIMの新ファシリティについて、日本共同議長下の優先課題として議論を開始したいとの提案を行った。その上で、日本の共同議長年に入った2023年初旬のタスクフォース会議(課長レベル)や、その後の代理会議において、日本から、ASEANメンバーのニーズに応えるべく、IMFの緊急支援の制度に倣い、(金融危機対応ではなく)自然災害やパンデミック等の外生ショックによって生じる国際収支困難に対応するRFFの具体的なアイデアを提示した。そのポイントは、2点であった。まず第一に、外生ショックに迅速に対応できるように、コンディショナリティ(融資条件)を設定しないこと。第二に、IMFの緊急融資がそうであるように、引出上限額を抑制すること。こうした日本の提案に対し、多くのメンバーからはRFF創設の議論を歓迎するとの声が当初から聞こえた一方、一部のメンバーからは慎重論も上がった。慎重派からは、特に、コンディショナリティがない中で、貸付資金の保全が適切に図られるのか、といった点が指摘された。また、自然災害やパンデミック等への対応は、CMIMの国際収支支援の範疇を超えており、本来、こうした対応は世銀やADB等の開発金融機関による財政支援を通じて行うことが適当、仮にRFFを創設する場合はCMIMとは別の枠組みの中に設けるべき、といった意見も出ていた。2023年5月の財務大臣・中銀総裁会議までには議論は収束せず、同会議の共同ステートメントにおいては、RFF創設の議論を歓迎した。その上で、AMRO*2が2023年末までにRFFの詳細な制度設計に係る提案を策定し、それを代理が検討する運びに合意し、RFFについて議論を継続することになった。2023年5月財務大臣・中銀総裁会議以降、日本の提案をベースに、同年秋のタスクフォース会議等の場でメンバーは議論を進めていった。議論の中で、ASEANメンバーから、引出上限額をCMIMの既存のファシリティよりも抑制しないこと、また、金利水準はCMIMの既存のファシリティより低くすることなど、より借入国の利益に配慮すべきとの意見も出てきた。しかし、議論を重ねる中で、コンディショナリティを設けないことも勘案し、貸付国・借入国双方の利益をバランスさせた制度設計が適切であるとの考えが共有されていった。同時に、RFFは国際収支困難に対応するツールであるという意味において既存のCMIMファシリティと変わりないとの理解も広がり、RFFをCMIMの下に設置することがコンセンサスとなっていった。そして、2023年12月に金沢で行われた代理会議の共同議長ステートメントにおいては、日本共同議長のリーダーシップの下、代理レベルで、CMIMの枠内でのRFF設置と、RFFの制度設計の大枠に合意することができた。制度の大枠は、(1)(日本提案のとおり)コンディショナリティを設けない、(2)借入金額は、CMIMの既存のファシリティ下での借入金額の半額、(3)金利はCMIMの既存のファシリティ下での金利と同水準を維持、というものであった。その上で、使用通貨が継続検討の論点と整理された。2023年5月の財務大臣・中銀総裁会議の共同ステートメントでは、AMROが2023年末までにRFFの詳細な制度設計に係る提案を策定し、それを代理が検討するという運びに合意していたのみであったため、2023年12月の金沢におけるRFF創設の代理レベル合意はこれを超えるものとなったという意味で、画期的であった。2024年に入り、5月財務大臣・中銀総裁会議においてRFF創設及びその制度設計について財務大臣・中銀総裁レベルで正式合意するため、メンバーは更に議論を進めた。その結果、5月財務大臣・中銀総裁会議においては、無事、RFF創設に正式合意することができ、また、コンディショナリティ、借入金額、金利については、代理レベルの合意(上述)通りに合意した。使用通貨に〈第2フェーズ:2023年12月財務大臣・中銀総裁代理会議(財務官レベル)まで〉〈第3フェーズ:2024年5月財務大臣・中銀総裁会議まで〉 22 ファイナンス 2024 Aug.
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