ファイナンス 2024年7月号 No.704
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ファイナンス 2024 Jul. 85五教館御成門 (2)キリシタン巡礼(3)大村の偉人(4)「ミライon」図書館(5)西九州新幹線大村市内の長崎街道沿いには、キリシタン弾圧の史跡も多く残されています。1657年に大村地方で潜伏キリシタンの存在が発覚するという大事件が起こり、603人が捕まり、406人が打ち首となり、首は塩漬けにされ長崎街道で20日間さらし首にされました、その後、キリシタンの妖術で首と胴がつながって生き返ることが恐れられたため、受刑者の胴体と首は別々に埋められました。市内には獄門所跡、首塚、胴塚、妻子別れの石などキリシタン巡礼の史跡があります。大村藩の藩校「五教館」は、九州では最も古く、藩士の子弟に限らず農民や町人の子弟も入学を許可されていたことが特徴です。特に幕末には、この藩校の出身者が中心となり薩摩藩や長州藩と協力し倒幕に活躍したことから、明治以降も新政府で活躍した偉人を多く輩出しています。「楠本正隆」は、新潟県令、東京府知事となり、また衆議院議長も務め、近代都市計画に大きな功績を残しました。上小路の旧屋敷が県指定有形文化財になっており見学できます。「渡辺清」は、大村藩勤皇三十七士の中心人物、新政府軍参謀として江戸無血開城の会談に立会い、新政府では福岡県令や福島県知事として活躍しました。「長岡半太郎」は、世界的な物理学者で、のちにノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士や朝永振一郎博士を教え、自身も最初の文化勲章を受章しました。今年注目されているのは没後80周年となる「石井筆子」です。前述の渡辺清の子であり、知的障害児の父といわれる石井亮一とともに「滝乃川学園」を運営し、近代の知的障害児教育に尽力しました。19歳でヨーロッパへ留学し、帰国後は津田梅子らとともに華族女学校の教師となりました。この日本初の知的障害児の教育施設は、渋沢栄一も理事長を務めました。県指定史跡「五教館御成門」の隣に石井筆子の像があります。「ミライon」図書館は、2019(令和元)年に開館した長崎県立・大村市立一体型図書館と大村市歴史資料館の複合施設です。県立・市立一体型図書館の県庁所在地以外での整備は全国初であり、蔵書202万冊は九州最大規模です。長崎に所縁の深い造船所のドックや湾をイメージしてデザインされた建物は、市中心部の新しいランドマークとなってます。4万冊の絵本・児童書を揃え子どもの読書活動の推進やワークショップなどの参加型イベントを行い、知の拠点としてだけでなく地域の活性化や情報発信が期待されています。多くの来館者を呼び込む工夫をしており、周辺の商店街の活性化など人の流れの創出に官民が連携してまちづくりに取り組んでいます。2022(令和4)年9月に西九州新幹線が開業し、大村インターチェンジ付近に新大村駅が設置されました。空港、高速道路、新幹線と高速交通ネットワークが車で10分圏内に揃う利便性の高さから、観光振興や市内の企業の事業拡大や新規の企業誘致による経済効果や雇用の創出が期待されています。また、新幹線を活かしたまちづくりとして、商業施設等の民間開発や公園整備など官民一体となって進められています。各地へのアクセスに有利な立地性に着目し、空港内や市中心部にサテライトオフィスやテレワークが可能な環境の整った個室やスペースなどの有料施設も増加しております。また、県内の移動は長崎市、佐世保市、雲仙市、島原市まで1時間圏内であり、五島、壱岐、対馬などの離島へも日帰り可能であることから、ワーケーションの拠点としてもアピールされています。大村市

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