前 長崎税関長崎空港出張所長上林 豊世界初の海上空港*1) 閉鎖性海域とは、湾の大きさに比べて湾口が狭く海水の入れ替わりが少ない海域です。大村湾の入り口は、同じく閉鎖性海域である佐世保湾の奥にあります。このような地形は世界的にも珍しく、大村湾は「超閉鎖性海域」と呼ばれています。(1) 穏やかな内海の大村湾と多良山系の裾野に広がる平野長崎空港は、1955(昭和30)年、現在の長崎空港が所在する簑島の対岸(大村市今津町)に設置され、「大村空港」の名称で開港されました。その後急増する航空需要と大型ジェット機に対応するため、大村湾の箕島に新空港が建設され、1975(昭和50)年5月1日、世界初の海上空港として供用開始となり、名称が「長崎空港」と改められました。3000mの滑走路を保有しており、1990(平成2)年開催の「90長崎旅博覧会」の際にはエールフランス社の超音速旅客機コンコルドが飛来した実績があります。現在では、国際線やチャーター便の増便を目指して、騒音問題が少ない海上空港のメリットを活かし運用時間「24時間化」に向けて早朝・夜間の臨時便の実証事業が行われています。国際線については、東アジアに近いことから中国(上海、香港)、韓国(仁川)路線がこれまで定期便として就航しております。また空港ターミナルビルについては、江戸時代に長崎の出島でオランダと交易があったことに因み、オランダの教会をモチーフにした外観を有しています。長崎空港は970mの箕島大橋で本土とつながっており、海に浮かぶ空の玄関口として現代の出島になっています。1 はじめに長崎空港出張所は、1951(昭和26)年、大村出張所として開設、大村監視署を経て、1980(昭和55)年、長崎空港出張所として機構が設置されました。大村市は、長崎県本土の中央に位置しており、超閉鎖性海域の大村湾の南東岸に面し多良岳にかけて広がっています*1。大村湾は、長崎県21市町のうち5市5町が面する里海であり、南北25km、東西12km、面積320km2で琵琶湖のおよそ半分の大きさです。江戸時代後期の儒者頼山陽(らいさんよう)がこの湖のような穏やかな大村湾を琴に例えて詠んだ漢詩に由来して、「琴湖(ことのうみ)」と称されることがあります。多良岳は、長崎・佐賀県の両県にまたがる多良岳県立自然公園に属する火山群で、大村市側には美しい渓谷の広がる黒木盆地があり、郡川などの河川が形成した扇状地となっています。山と離島の多い長崎県の中では、大村市は平野が広がる数少ない地域で、海と 82 ファイナンス 2024 Jul.2 大村の地勢と歴史52年連続で人口の 増えているまち大村市
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