法人企業景気予測調査では、前記のとおり、「判断項目」や「計数項目」のほか、10個の選択肢の中から重要度の高い3項目を回答していただく「アンケート項目」を毎調査期に2問ずつ設定しています。そのうち「今年度における利益配分のスタンス」は、毎年1−3月期(平成23年度以前は10−12月期調査)に調査しています。調査結果の推移を大企業でみると、利益配分のスタンスについて、回答社数構成比の1位は「設備投資」、2位は「株主への還元」であり、ここ数年順位に変動はありませんが、「内部留保」が前年の3位から4位に下がった一方、「従業員への還元」が前年の4位から3位に上がっています。なお、「従業員への還元」の回答社数構成比は、大企業のみならず中堅企業、中小企業でも前年より高くなっており、今後、企業収益の改善が賃上げや設備投資に向かうことが期待されます。コラム4【図12】「今年度における利益配分のスタンス」の推移(全産業)判断に用いられているほか、財務省でも法人税収の見積もりの基礎資料として、法人企業景気予測調査の経常利益の実績値及び見通しを活用しています。また、民間研究機関等におけるマクロ経済分析等に用いられるなど、官民で幅広く活用されています。さらに、法人企業景気予測調査では、全国の調査結果のほか、各地域の財務局等において地域別の調査結果を公表していることから、地域経済の動向把握や分析を行うことが可能となっています。こうした各地域の調査結果(企業収益・設備投資)については、各財務局等が作成している「管内経済情勢報告」に活用されており、これらについては新聞報道等でも大きく取り上げられています。統計調査では、時代の変化やニーズに対応した不断の見直しが求められます。前述の第IV期基本計画において、「公的統計が、重要な情報基盤としての役割を果たすことができるよう、時代の変化や統計ユーザー等のニーズに対応した有用な統計の整備を推進する」こととされています。この基本計画を受け、法人企業統計調査における各種の課題について検討を行う中で、令和5年7-9月期調査から、開業準備中法人の取扱いを見直すこととしました。具体的には、これまで設立登記終了後であっても、まだ正常な営業活動を開始するに至っていない法人は開業準備中法人として、調査対象から除いていましたが、企業活動の実態をより的確に把握するという法人企業統計調査の目的を踏まえ、開業準備中法人であっても、費用等の発生が認められる法人は調査対象から除かないこととしました。また、基本計画では、公的統計の整備に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、施策展開に当たっての基本的な視点及び方針、公的統計の整備に関 76 ファイナンス 2024 Jul.3. 時代の変化やニーズに対応した調査の見直し「従業員への還元」の割合が増加(コラム4) 法人企業景気予測調査でみる利益配分のスタンス
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