FOREIGNFOREIGNWATCHERWATCHER 1 1 はじめに日本にいると、遠い中南米について考える機会はあまりないかもしれません。私自身、いつか行ってみたい場所として、ペルーのマチュピチュやボリビアのウユニ塩湖を思い浮かべることはありましたが、イメージは漠然としたものでした。*1) 本稿の内容は、筆者が参考資料等を元に個人的に執筆したものであり、誤りがある場合は筆者個人に責任があります。また、本稿は筆者の個人的な見IDB(Inter-American Development Bank、米州開発銀行)は、6億超の人口を有する中南米・カリブ地域への支援を行う開発金融機関です。IDBグループには、公的セクター向けの融資・保証・技術協力等を行うIDB(1959年設立)の他に、民間セクター向けに支援を行うIDB Invest(1986年設立)、そしてスタートアップを含む小規模な民間企業を支援するIDB Lab(1993年設立)の3つの機関が存在します。IDB約2000名、IDB Invest約450名、IDB Lab約90名のスタッフが、ワシントンD.C.の本部解であり、筆者の所属する組織を代表するものではありません。及び各国のカントリーオフィスで勤務しています。日本は、加盟国48カ国(うち中南米・カリブ地域26カ国)のうち、IDBで5%のシェア(5位)、IDB Investで3.73%のシェア(8位)を持つ主要株主の一つであるとともに、IDB Labにおいては最も大きなシェアを持つトップドナーとなっています。また、IDBグループを通じた中南米・カリブ地域へのさらなる協力のため、1988年にはIDBに日本信託基金を設立し、現在までに累計4.3億米ドルを超える支援を行ってきています。中南米がぐっと親しみやすいものになりました。食文化の面でも、醤油や照り焼き味、刺身を使ったメニューなど、「Nikkei」を冠したメニューを見かけることがしばしばありました。ペルーに限らず、日本と中南米との関係を語る上で、日系人はとても重要な存在です。直近では今年5月、岸田総理がブラジル・パラグアイを訪問した際にも、各国で日系人と懇談し、中南米日系社会との交流促進が表明されました。本稿では、中南米における日系人コミュニティの基礎情報に触れたうえで、IDBグループを通じた中南米支援の中で、現地の日系人との連携が一つの鍵となったプロジェクトを紹介したいと思います。*1IDB(米州開発銀行)理事室 江口 枝里子 64 ファイナンス 2024 Jul.IDB理事室に勤務して約2年、中南米が抱える様々な社会・経済課題へのアプローチを議論するとともに、中南米出身の同僚との交流や、現地に赴く機会を通じて、中南米が以前よりずっと身近になってきています。なかでも、出張先のペルーで、現地に根ざした日系人文化・コミュニティの存在を感じたとき、遠かったコラムIDBグループと日本海外ウォッチャーIDBグループを通じた中南米支援 ~日系人コミュニティとの連携事例~
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