ファイナンス 2024年7月号 No.704
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再保険会社(受再者)元受保険会社(出再者)保険契約者再保険取引の項目国際収支統計上の分類(出所)トーア再保険株式会社「再保険の概要」、一般社団法人日本損害保険協会「損害保険料の仕組み」、日本銀行国際局「国際収支関連統計項目別の計上方法」(出所)財務省・日本銀行「国際収支統計」、一般社団法人日本損害保険協会「ファクトブック2023日本の損害保険」(兆円)▲2.0▲4.0▲6.0▲8.0・再保険とは、保険会社が別の保険会社(再保険会社)に対して再保険料を支払って、自己の元受保険契約が負っているリスクの一部または全部を再保険会社に転嫁する取引のことを指す(図表1)。・再保険取引が、国内外の保険会社間で行われる場合には、国際収支統計において「再保険料」「再保険金」が計上される。このうち「再保険料」については、保険金の原資となる純保険料部分、保険会社の事業費となる付加保険料部分に分けられる(図表2)。・純保険料部分の再保険料と再保険金は、資金の移転として第二次所得収支(その他経常移転)に計上されるが、付加保険料の支払は、再保険会社が提供するサービスを購入することと位置づけられるため、サービス収支(保険・年金サービス)に計上される(図表3)。・「再保険料(純保険料)」と「再保険金」は、ともに第二次所得収支のその他経常移転に計上され、収支相当の原則上、それらは長期的に見れば相殺されゼロ近傍になる。だだし、第二次所得収支のその他経常移転の推移をみると、自然災害や外貨建て保険契約の増加等を背景に、出再保険料も増加しており、ネットで赤字幅が拡大している(図表4)。・国内損害保険会社における海外再保険会社との再保険取引例をみると、想定外のリスクに備え、元受保険会社は出再保険料を支払い、再保険金支払に該当する大災害等のイベントが発生した際に、再保険会社から再保険金を受取ることができ、再保険料の支払一辺倒でないことが確認できる(図表5)。・また、国内から海外へ出再する(再保険料を支払う)だけでなく、海外から国内に受再し(再保険料を受取り)、有事の際に再保険金を支払うといった取引も行われているが、後述の理由から出再の規模感には劣る(図表6)。(注)その他経常移転収支に含まれるのは再保険料の純保険料部分、再保険金だけではない。外国政府から所得・富等に課される経常税や非居住者と受払する損害賠償金・和解金、外国政府に支払う罰金・課徴金、外国でのリコールに伴い居住者が負担する費用も含む。元受保険契約危険の転嫁保険料の支払い再保険料の保険金の支払い再保険金の受取支払ネット4.02.00.020000510再保険契約危険の転嫁純保険料支払い支払い社費(億円)15,00010,0005,000▲5,000▲10,000▲15,00013141516171819202122152023(年)0(注)2018年度・2019年度は台風等自然災害被害で多額の保険金支払いがあり、再保険金の受取も大きかった。保険料付加保険料代理店手数料受取再保険金出再保険料出再保険収支再保険料(純保険料)再保険料(付加保険料)利潤再保険金(億円)8,0006,0004,0002,0000▲2,000▲4,000▲6,000▲8,000受再保険料支払再保険金受再保険収支13141516171819202122(年度)第二次所得収支>その他経常移転サービス収支>保険・年金サービス第二次所得収支>その他経常移転(年度)(図表1)再保険の仕組み(図表4)第二次所得収支におけるその他経常移転の推移(図表2)保険料の成り立ち(図表5)損害保険会社の再保険取引推移(出再側視点)(図表3)再保険取引の項目における 国際収支統計上の分類(図表6)損害保険会社の再保険取引推移(受再側視点)再保険の仕組み/国際収支統計上の取扱い「再保険料(純保険料)」と「再保険金」の分類 50 ファイナンス 2024 Jul.大臣官房総合政策課 調査員 胡桃澤 佳子/木下 裕也本稿では、国際収支統計における再保険の計上方法を整理した上で、再保険市場の動向について考察する。コラム 経済トレンド121国際収支統計からみた再保険市場の動向

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