ファイナンス 2024年7月号 No.704
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*1) 財政に関して、国の財政運営の基本を定める法律として財政法が、会計経理の手続を定める法律として会計法があり、いずれも主計局法規課が所管し*2) 国の公共調達に関する一般法規として、「会計法」、「予算決算及び会計令」、「予算決算及び会計令臨時特例」等がある。WTOの複数国間貿易協定である「政府調達に関する協定(Agreement on Government Procurement)」の対象となる調達手続については、同協定との整合性を確保するため、国内法令として「国の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令」及び「国の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める省令」を定めている。*3) 令和6年第5回経済財政諮問会議(令和6年5月10日)「資料5 新技術の社会実装による社会課題の解決と持続可能な成長の実現(有識者議員提出資料)」。会議では、岸田総理大臣から「脱炭素、経済安全保障、生活の質の向上や人口減少・少子高齢化への対応といった分野での課題の解決を経済成長へとつなげていくことが重要である。このため、研究開発や人材投資を拡大するとともに、政府調達や規制改革を通じてスタートアップによる技術開発を支援し、それを地域で実践することで、新技術の社会実装を加速していく。」といった旨の発言がなされた。ている。(1)公共調達の契約方式の概要○ 一般競争契約(open tendering)発注者が公告をし、一定の資格を有する不特定多数者による入札を行うことで落札者を決定し、その者と契約を締結する。○ 指名競争契約(selective tendering)発注者が指名した競争参加者による入札を行うことで落札者を決定し、その者と契約を締結する。契約の目的等により競争に加わるべきものが少数の場合等に認められる。〈最低価格自動落札方式〉予定価格の制限の範囲内で最低の価格をもって申込みをした者を落札者とする方式。〈総合評価落札方式〉価格及びその他の条件が国にとって最も有利なものをもって申込みをした者を落札者とする方式。価格のみでの競争に適さない場合に採用される。※  総合評価落札方式は、財務大臣との事前協議が必要だが、これを不要とする包括協議が情報システム等、公共工事等、調査・研究・広報等について整えられている。○ 随意契約(limited tendering)競争入札によらず、任意に特定の契約の相手方を選定して、その者と契約を締結する。契約の性質又は目的が競争を許さない場合や緊急の必要により競争に付 36 ファイナンス 2024 Jul.前 主計局法規課長 西村 聞多/前 調査係 保田 紗里0.はじめに支出の原因となる契約については、その支出が租税その他による国民の貴重な財源をもって充てられるものであるから、最も効率的に使用されるように配慮しなければならない。このことから、契約制度は、会計制度の理念である公正及び厳正の原則に加え、効率的予算の執行、すなわち経済性の原則が要請され、これらの諸原則の調和を図る必要がある。*1*21.公共調達の契約方式近年、特定の政策目的の実現にも資するよう、公共調達を活用する取組(付帯的政策)が行われている。最近では、新技術の社会実装による社会課題の解決を目指し、政府調達を通じてスタートアップによる技術開発を支援する動きも見られる。*3以下、公共調達の契約方式を説明した上で、付帯的政策について、その対象や活用する際の要件等について、現状を分析している。国の契約は、経済的かつ効率的に行っていくことが原則であり、契約相手方の選定プロセスにおける公平性・競争性・透明性を確保することが重要である。一般競争契約が原則的な契約方式であり、一定の事由がある場合には指名競争契約、随意契約が認められる。また、競争契約の落札方式には、最低価格自動落札方式と総合評価落札方式がある。公共調達の現状について~付帯的政策への活用を中心に~

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