(2)実態・運用に即した法令の整備現在の実態と運用状況を踏まえ、近距離出張の交通費を日当で賄うことを廃止して実費支給とするなど、複雑化しているルールを整理するとともに、実態に合わせた旅費の支給を可能とするため、特別急行料金を支給する際の距離制限を廃止するなど、個別の旅費種目の見直しが不可欠である。(3)事務手続の簡素化・効率化デジタル化の進展等を踏まえ、行政事務の合理化を図り、柔軟な制度設計とする必要がある。このため、紙ベースの提出書類の「様式」を廃止するとともに、透明性や競争性を確保した上で、旅行代理店等を活用した旅費の請求手続を拡充すべきである。また、出張や勤務実態に応じた旅費の計算を可能とすることが望まれる。(4)国費の適正な支出の確保財政規律の担保やオンライン会議の活用を含めた業務の効率化を進めることを大前提とした上で、国家公務員の旅費制度の在り方として、旅費の適切な実費弁償を図る。あわせて、説明責任や透明性を確保し、不正防止・冗費節約の観念が損なわれないための新たな仕組みについて検討すべきである。以上の観点から、速やかに、国家公務員等の旅費制度を国内外の社会情勢の変化に対応できるものとする。国家公務員の働き方改革に資する事務負担軽減や業務環境の改善を図るため、財務省においては、令和6年(2024 年)の通常国会に旅費法改正法案を提出すべきである。【図1】令和6年度予算の編成等に関する建議(令和5年11月20日 財政制度等審議会)〔抜粋〕Ⅱ.令和6年度(2024年度)予算編成の課題11.国家公務員等の旅費制度の改正国家公務員等の旅費制度は、デジタル化の進展、旅行商品や販売方法の多様化、交通機関・料金体系の多様化、海外の宿泊料金の変動等、国内外の社会情勢の変化に対応できていない面がある。例えば、急激な為替変動等により、宿泊料の実費額が旅費法に規定される定額を超過する事態が生じている。こうした状況を受け、例外的な取扱いが増加し、その結果、執行の際のルールが複雑化しているという問題が起きている。このほか、公務の円滑な運営を図るためには、公務員の時間コストや安全性・利便性にも配慮しなければならない。さらに、テレワーク等柔軟な働き方等による出張実態の変化を制度に反映させること、事務負担軽減や業務環境の改善を図ることも課題となってきた。こうした点を踏まえ、旅費制度について広く見直しが求められる。(1)法定額と実勢価格との乖離の解消急激な為替・物価の変動を受け、特に海外出張において、宿泊料の実費額が旅費法に規定される定額を超過し、金額調整に係る協議手続が増加している。旅費の支給方式等制度全体に通ずる原則を検証し、実勢との乖離を解消する必要がある。このため、公務上必要となる実費の弁償という旅費制度の趣旨を踏まえ、宿泊料及び移転料は、これまでの定額支給方式を改め、実費支給を原則とすべきである。*7) https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/■scal_system_council/sub-of_■scal_system/proceedings/material/20230428zaiseia.html*8) https://www.digital.go.jp/councils/administrative-research/councils/24217e04-5169-44de-90fe-135b314e6d45*9) https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ryohigyoumu/kaigi_dai1/gijisidai.html*10) https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/■scal_system_council/sub-of_■scal_system/proceedings/material/20231027zaiseia.html*11) https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/■scal_system_council/sub-of_■scal_system/report/zaiseia20231120/zaiseia20231120.htmlこうした課題に対応するため、政府内において、旅費制度の見直しに向けた検討が開始された。令和5年4月28日に、財政制度等審議会において、財務省から、旅費制度の見直しに当たっての視点を説明するとともに、令和6年の旅費法改正法案提出を目指す旨を表明した*7。また、令和5年5月30日に、デジタル臨時行政調査会において、井上貴博財務副大臣(当時)から、旅費制度の見直しについて幅広い観点から抜本的な見直しを行う必要がある旨を説明し、岸田文雄総理大臣から、関係大臣が協力して取り組みを加速していくよう指示があった*8。旅費制度に関する課題は、旅費の請求・計算業務の煩雑化に伴う事務負担の発生など各府省に共通するものであることから、旅費業務プロセスの見直しやデジタル技術の活用等を通じて、関係省庁と連携して取り組むことが重要である。このため、令和5年9月8日に、旅費業務の効率化に向けて全省庁で一体的に取り組むために設けられた旅費業務効率化推進会議において、各省へのヒアリングを踏まえて、「旅費業務プロセスの改善方針」が決定された*9。その後、財政制度等審議会において、令和5年10月27日に、制度見直しの具体的な方向性について議論が行われ*10、令和5年11月20日の令和6年度予算の編成等に関する建議においては、旅費制度について、国内外の経済社会情勢の変化に対応できるものとするとともに、国家公務員の働き方改革に資する事務負担軽減や業務環境の改善を図るため、令和6年の通常国会に旅費法改正法案を提出すべきであるとの意見があった(本建議の抜粋は【図1】)*11。 32 ファイナンス 2024 Jul.4.改正旅費法の概要こうした検討を踏まえ、財務省において、旅費法改正に向けた法制化作業が行われた。改正旅費法は、令和6年2月9日に閣議決定・国会提出され、衆参両院令和6年度予算の編成等に関する建議(令和5年11月20日財政制度等審議会)〔抜粋〕
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