ファイナンス 2024年7月号 No.704
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ファイナンス 2024 Jul. 31国家公務員等の旅費制度の見直しについて(法律編) *4) 宿泊料定額を最後に改正したのは、内国旅行が平成2年、外国旅行が昭和59年となっている。*5) 用務先までの移動時間、公務の円滑な遂行に際して必要となる設備等、一定の条件により検索した結果、定額内で宿泊可能な施設を選択できない場合には、財務省との個別の協議を省略して、「現に支払った宿泊料の額」を上限として支給できるよう、各府省と包括協議を締結した。*6) 包括協議の対象とならないが、やむを得ず法定額を上回る宿泊施設に宿泊せざるを得ない場合において、旅費を増額して支給するための財務省との個別の協議について、出張者の更なる負担軽減を図るため、手続に必要な資料や作業プロセス等について改めて解説・周知するとともに、フォーマット化と簡素化を実施した。(2)実費弁償と定額支給行を命じた以上、必要な旅費を支給して、公務の遂行に支障をきたさないようにすることを意味している。さらに、「国費の適正な支出を図ること」とは、法律制定の根本目的であり、国費の濫用を防ぐため、支出の適正化を図ることを意味している。このため、旅費制度においては、旅行命令制度や旅費請求手続、旅費の計算原則(経済性原則)等を法定し、旅費制度の適切な運用を確保している。なお、ここでいう「適正」という言葉は、濫用を防ぐことだけでなく、必要な経費は、旅費制度が許容する範囲内で、適切に支弁することも示唆している。国家公務員等の旅費は、当然ながら国民の血税により賄われるものなので、旅費制度の運営の実務を行う担当者としては、「国費の適正な支出を図る」といった視点は常に忘れないように意識している。旅費支給事務の担当者のみならず、実際に出張等を行う全ての旅行者においても肝に銘じておいてもらいたい視点である。旅費は、旅行者が旅行中に支出した経費に充てるために支給される金銭であり、いわゆる実費弁償の一種である。旅費が実費弁償であることは、現行法には明記されていないものの、明治19年閣令第14号第1条において、「内国旅費ハ官吏公務ニ依リ本邦内ヲ旅行スルトキ旅行中一切ノ費用ニ充ツル為之ヲ支給ス」と規定していることからも明らかである。このため、本来であれば、国が旅行者に対して旅費を支給する際には、旅行者が支出した実費額を弁償することが望ましいと考えられる。しかしながら、現行法は、昭和25年当時の実情に照らして、証拠資料確保の困難や行政事務の簡素化の要求等から、宿泊料を含め、多くの旅費種目について、標準的な実費額を基礎とした定額を支給することとしている。こうした定額は、旅費法の別表において規定されている。例えば、宿泊料の定額については、本省の課長補佐級職員が大阪に宿泊した際には10,900円、ニューヨークに宿泊した際には19,300円と規定されている*4。旅費法は、このように宿泊料等の定額を規定しながらも、定額により旅行することが困難である場合には、各庁の長が財務大臣への協議を経て旅費を増額して支給することができるとし、逆に、定額を支給すると不当に旅行の実費を超える場合には、各庁の長が旅費を減額して支給することができるとしている(旅費法第46条)。こうした調整規定により、現行の旅費法は、多くの旅費種目で定額支給を採用しながらも、個々の事例についてできるだけ旅行の実態に即した旅費を支給することを可能としている。最近では、インバウンドの増加や為替・物価の変動により、宿泊料が定額を超過する事例が増加している。このような事態に対して、財務省としては、執行面において不足が出ないように各府省と金額調整を行うとともに、旅費を増額して支給する際の調整手続に係る職員の事務負担の軽減を図るため、包括協議の締結*5や個別協議の事務簡素化*6を行い、説明責任を果たしつつ事務の合理化を実施してきた。・デジタル化の進展・旅行商品や販売方法の多様化・交通機関・料金体系の多様化・海外の宿泊料金の変動といった国内外の経済社会情勢の変化に対応できていない面があり、旅費制度の例外的な取扱いが増加し執行ルールが複雑化している。これにより、旅費支給事務に長く携わっている職員にとっても非常に分かりにくいものとなっている。加えて、テレワーク等柔軟な働き方等による出張実態の変化を制度に反映させつつ、職員の負担軽減・業務効率化を図るため、広く見直しを行うことが必要である。3.見直しの経緯前述のとおり、これまでも執行面で様々な工夫を行いながら対応してきたものの、制度全体を広く見ると、旅費法は、

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