*1) なお、法律名が国家公務員【等】となっているのは、国の要請によって公務の遂行を補助するために私人が証人や鑑定人、通訳等として旅行を行う場*2) 旅費法制定当時は片道500km以上に限っており、これは東京〜大阪間の距離に相当するものである。*3) 会計法(昭和22年法律第35号)が国の会計に関する基本的事項を規定している中で、会計法とは別に旅費法を設けている理由は、旅費の特殊性にある。旅費は、旅行者に通常の勤務地を離れて旅行をさせた上で、(旅行の都度、逐一、国自身が入札や契約等の手続を経て交通機関やホテル等を選定することは実務上困難であることから、)旅行者個人が契約・支払を行ったものに対して、国が費用弁償を行うという立替払・実費弁償を前提としている。このため、会計法が規律する、国が直接契約を行う一般的な他の会計事務とは性質が異なることから、旅費法として、旅費の性質に応じた基準や手続を規律する必要性があるのである。合の旅費についても、旅費法の対象となるためである。(1)旅費制度の目的1.はじめに(1)特急料金は、片道100km以上移動する場合に支給する(2)車賃(バスや路面電車等を利用する際の旅費)は、原則、1kmにつき37円を支給するこれらは何とも不思議な内容だが、いずれも、国家公務員等の旅費に関する法律(昭和25年法律第114号)(以下「旅費法」という。)に規定されている内容である。旅費法は、国家公務員等が公務のため旅行(出張・赴任等)をした場合に国が支給する旅費について規律する一般法である*1。我が国の旅費制度の歴史は長い。旅費規則として公にされたのは、内国旅費については明治19年閣令第14号に、外国旅費については明治20年閣令第12号に遡る。その後、内国旅費規則(昭和18年勅令第684号)と外国旅費規則(大正10年勅令第401号)を経て、昭和25年に現行の旅費法が制定された。その後、今日まで、必要に応じて金額や運賃の等級等の見直しは随時行ってきたものの、70年以上にわたり法律の基本的な内容が維持されてきた。冒頭の例に戻ると、(1)については、旅費法制定当初は、特急列車が普及しておらず、運行する路線が限定的だったこと等から、距離による一律の制限を設けたもの*2であるが、特急列車の運行が一般化・多様化した現在では、距離により一律にその利用を制限する合理性は失われてきている。また、(2)については、旅費法制定当時は、民間のバス等の運賃や経路の確認、交通機関の利用証明が困難であったことから、一律の定額を設けていたものであるが、これらが容易となった今日においては、定額を設定する合理性が失われてきている。このように、現行の旅費法の内容は必ずしも現下の経済社会情勢に合わないものとなっているため、今般、旅費制度を抜本的に見直すこととし、令和6年通常国会において、国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正する法律(令和6年法律第22号)(以下、「改正旅費法」という。)が成立した。本稿では、現行の旅費制度の概要、見直しの経緯及び改正旅費法の概要を紹介する。制度の概要を紹介する。旅費制度の目的については、旅費法第1条において、「公務のため旅行する国家公務員等に対し支給する旅費に関し諸般の基準を定め、公務の円滑な運営に資するとともに国費の適正な支出を図ることを目的とする。」ことが掲げられている*3。なお、改正後の旅費法においても、この目的はそのまま継承されている。「諸般の基準を定め」とは、旅費制度において、旅費の支給要件や旅費の計算・支給方法、旅費の調整等の一般的な基準を設けることを意味している。また、「公務の円滑な運営に資する」とは、公務のために旅2.現行の旅費制度の概要旅費制度の見直しを紹介するにあたり、現行の旅費 30 ファイナンス 2024 Jul.国家公務員等の旅費制度の見直しについて(法律編)前 主計局給与共済課課長補佐 秋山 稔/前 主計局給与共済課課長補佐 末松 智之/前 主計局給与共済課給与第5係長 久保 輝幸/主計局給与共済課給与第5係 谷 源太郎/前 主計局給与共済課給与第4係長 畝川 翔太/前 主計局給与共済課給与第4係 絹川 真由
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