[3]. 神戸市行財政局財政部財務課(2012)「神戸市の主幹事方式を中心とした起債運営とIRの取り組みについて」『地方債』,16−20.[4]. 小西砂千夫(2011)「市場と向き合う地方債 -自由化と財政0 ファイナンス 2024 Jul. 29(出所)総務省及び横浜市資料より筆者作成80604020図表8 横浜市の市場公募債に占めるフレックス枠の割合の推移(%)100201020112012201320142015201620172018201920202021202220232024主幹事方式入門*28) 筆者の理解では、執筆時時点で横浜市と神戸市のみ、公募地方債のすべてをフレックス枠で発行しています(ただし、神戸市の場合、共同発行債が発行されているところ、それにはシ団引受方式が用いられています。なお、横浜市は共同発行債を発行していません)。*29) 報道によれば、トランスペアレンシー方式が2021年度から全面的に導入されたところ、マーケットによっては当初想定したほど投資家の需要がない可能性があり、マーケットに合わせて機動的に起債が可能であるフレックス枠の重要性が高まったことが完全フレックス制導入の背景にある、という指摘もあります(トランスペアレンシー方式については別の機会に記載します)。*30) 神戸市はIR資料などで「2008年度、地方自治体で初めて全年限で主幹事方式を採用」と指摘しています(下記等を参照)。 *31) 名古屋市は、基本的にすべて主幹事方式を採用しているものの、「幹事方式」も採用しています。シ団交渉方式(幹事方式)とは固定シェア分(100https://www.city.kobe.lg.jp/documents/8035/kobe_ir_r5.pdf億円)を通じてシ団による継続販売を行う一方、幹事上乗せ分を起債毎に選定する幹事会社(3社程度)に多く配分する方法です。参考文献[1]. 石田良・服部孝洋(2020)「日本国債入門:ダッチ方式とコンベンショナル方式を中心とした入札(オークション)制度と学術研究の紹介」財務総合政策研究所PRI discussion paper series(20A-6)[2]. 石田良、服部孝洋(2024)「引合方式入門―大阪府債の事例―」『ファイナンス』,22−28.秩序維持のバランス」有斐閣[5]. 齋藤通雄・服部孝洋(2023)「齋藤通雄氏に聞く、日本国債市場の制度改正と歴史(前編)」『ファイナンス』,34−45.[6]. 地方債協会(2010)「金融市場環境の変化を受けた地方債投資ニーズの動向と資金調達手法の変化」、平成21年度「地方債に関する調査研究委員会」報告書収録.[7]. 東京都(2003)「『都債発行に関する制度改革検討委員会」報告」[8]. 服部孝洋(2023)「日本国債入門」金融財政事情出版会[9]. 横浜市財政局総務課市債係(2003)「地方の自立を実現する地方財政制度の在り方(2)地方債制度における自由度拡大に向けた取り組み」『調査季報』153号,33−38.[10]. 持田信樹・林正義(2018)「地方債の経済分析」有斐閣年末に発行される地方債発行計画において各自治体の市場公募地方債の詳細が発表されるのですが、フレックス枠とは、地方債発行計画が出た時点で一回当たりの発行額やタイミングを定めず、自治体が発行枠の中で、マーケットの状況等に鑑み、自らが望ましいと考えるタイミング・年限の債券を発行する仕組みです。具体的には、自治体が主幹事証券等とコミュニケーションをとりながら、例えば、翌月に20年債を200億円発行するという方法です。図表8は横浜市が発行する市場公募債のうち、フレックス枠の推移を示したものです。かつて、フレックス枠は10~30%程度であったところ、2021年度以降、フレックスの割合が100%になっていることがわかります。横浜市のように、「完全フレックス制」を4.終わりに今回は主幹事方式の概要に加え、最初に導入した東京都と横浜市の事例を取り上げました。次回はシ団引受方式を説明します。とる自治体は現時点で非常に少ないのが現状ですが*28、マーケットの動きに応じて、より機動的に年限や発行タイミングを考えることができる、マーケットを重視した新しい起債方法ともいえます*29。*30*31BOX 地方自治体による全年限の主幹事方式採用本稿で説明したとおり、全年限の債券を主幹事方式により発行する自治体も増加傾向にあります。最初に全年限主幹事方式を導入したのは神戸市です*30。神戸市行財政局財政部財務課(2012)では、「阪神・淡路大震災からの復興対策のための財政出動が10年以上経ってもなお、市の財政が危機的状況にあるというイメージをもたらし、それがスプレッドに反映された結果となりました。そのイメージを払拭するため、本市が震災以降途切れることなく行財政改革を実行しており、その効果が財政状況の改善に繋がっていることを多くの方に知ってもらう必要があると考えました。そこで投資家との対話を行う手段として引受方式を主幹事方式とし、平成20年度から個別債の全ての年限で採用することにしました」(p.18)と説明しています。本稿で紹介した横浜市がそれに続き、今では、大阪市、兵庫県、福岡県が全年限の主幹事方式を採用しています*31。一方、現時点でも、シ団引受方式は5年・10年の地方債を軸に広く用いられていることに注意してください。
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