ファイナンス 2024 Jul. 27(出所)東京都(2003)(出所)東京都(2003)東京都債(10年公募債)第2テーブル都債と第2テーブルB-A主幹事の選定手順(提案による選定)(ア) 発行体は、公社債の引受実績(国債、財投機関債、普通社債等)や 日頃の提案状況などを総合的に分析し、まず4~10社程度の主幹事候補 会社を選定する。 (イ) これらの主幹事候補会社から起債戦略、発行にかかるサポート体制 等についての提案書を提出させる。 (ウ) この提案書に基づき、主幹事候補会社と面談を行う。 (エ) 発行体内部で選定のうえ、主幹事を指名する。*17) 東京都(2003)のp.31より抜粋。*18) 同報告書では「条件交渉が夕刻に行われ、正式な条件決定が翌日の午前11時となっているため、その間シ団は価格変動リスク(オーバーナイトリスク)を負うこと」(東京都 2003, p.31)としています。*19) 同報告書では「地方債銘柄の中で投資家からの需要の低いものを、条件決定した価格よりも値引きして販売し、その値引き分を発行手数料で賄う「レス販売」が常態化しているとの指摘も一部に見られること」(東京都 2003, p.31)としています。*20) 「主幹事の選定は提案による方法が最もメリットが多いと考えられるため、これを基本とするべきである。この方式を導入することによって、引受リスクが低減し、発行手数料などのコスト削減が期待できる。また、主幹事は市場実勢を正確に把握する責任を負うことから、発行条件などの面で透明性が高まる。このため、投資家の評価を得やすく、安定的な調達や有利な発行条件を確保するという面で効果が期待できる。さらには、主幹事候補会社の提案を競わせることとなるため、適正な競争も働くこととなる」(東京都 2003, p.37)としています。*21) 横浜市財政局総務課市債係(2003)のp.37-38より抜粋*22) 横浜市財政局総務課市債係(2003)のp.38より抜粋。平成14年4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月応募者利回りA応募者利回りB利回り差0.0180.0170.0030.0040.0040.0000.0000.0000.0000.0000.0000.0001.4531.4631.4401.3481.3311.3091.3031.1201.0800.8900.8950.8031.4711.4801.4431.3521.3351.3091.3031.1201.0800.8900.8950.803価格差15銭15銭3銭3銭3銭0銭0銭0銭0銭0銭0銭0銭平成15年図表5 都債と第2テーブルの発行条件の推移図表6 主幹事の選定手続き主幹事方式入門 3.2 超長期債以外の年限へ拡大:横浜市の事例この報告書では、シ団に支払う発行手数料が、一般事業債の発行手数料よりも割高であるという問題意識も指摘されています。シ団引受方式の場合、「投資家の需要積み上げではなく、国や発行団体の代表、シ団代表との協議により発行条件を決定するため、シ団にとっては透明性が低く、リスクが高い引受となっていること」*17と指摘されています。これに加え、引受に係るオーバーナイトリスク*18やレス販売の問題*19も発行手数料増につながり、相対的に引受リスクが低く、発行に関する透明性も高い主幹事方式に移行することで、発行コストを低下させることができると評価されました*20。また主幹事選定において、証券会社などから提案を受けたのち、どう選定を行っていくかについても議論されています。その手順が図表6ですが、この手法は当時の他の債券の発行方法を参照しており、横浜市が初めて主幹事方式を導入する際も、同一の手法が用いられています。その後、東京都は年限の多様化に加えて、外貨債やグリーン債、さらに、融合方式と呼ばれる独自の発行方式を実施していきますが、特に融合方式については次回の論文で説明します。超長期債において主幹事方式を採用前述のとおり、横浜市は、2003年に、地方債を発行する地方自治体の中で最初に主幹事方式を導入した自治体です。当時の経緯を知るには、横浜市財政局総務課市債係が記載した調査季報153号が参考になります(横浜市財政局総務課市債係,2003)。横浜市は、主幹事方式が導入される以前から市場を重視した発行の努力を行っていたとされています。横浜市財政局総務課市債係(2003)によれば、主幹事方式の導入という観点で、横浜市は個別条件交渉方式に移り、自治体初の20年満期一括の市場公募債を発行しましたが、「20年債という投資家層の限られた特殊な市場であること等を考慮し、民間企業が発行する社債などで一般的な『主幹事制』で行うこととした」*21としています(満期一括償還方式については石田・服部(2024)のBOXを参照)。横浜市では、20年債の継続的な発行を行うために、「投資家重視のスタンスに立ち、『提案による主幹事先行方式』による発行条件決定方式を採用すること」*22とし、「主幹事会社はプロポーザル方式で『提案書』を一定の評価軸で審査した上で、『横浜市債に関する
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