直島ホール(写真提供:直島町)所有者:直島町、設計:三分一博志建築設計事務所タブレット(写真提供:直島町)ファイナンス 2024 Jun. 65一方、冒頭にご紹介した「ベネッセアートサイト直島」の取組みは、昭和60年頃、当時の直島町長と福武書店(現(株)ベネッセホールディングス)の創業者との間で、直島開発に関する約束が交わされたことが始まりとなっています。その後、島南部に、建築家・安藤忠雄氏の設計により、美術館とホテルが一体となった「べネッセハウス」や「地中美術館」、「李リ・禹ウファン煥美術館」といった施設が順次整備されたほか、島中央部においても、古民家を活用して美術展示を行う「家プロジェクト」が実施されるなど、島全体を活用してアート活動が進められています。直島町では、観光等による来島を移住・定住の第一ステップと捉え、多言語でのエリアマップ作成や均一料金(100円)での町営バス運行など、観光客の受入環境を整えることを通じて観光振興を図っています。今後は、令和7年の第6回瀬戸内国際芸術祭と同時期に「直島新美術館(仮称)」、令和9年にはホテル「マンダリンオリエンタル瀬戸内-直島」の開業が予定されており、観光客増加に備え、受入環境を充実させていくことが期待されます。また、直島町は、平成27年に地域住民のレクリエーション等の活動拠点として「直島ホール」(直島町民会館)を整備しました。この建物は、自然風の力で換気を行うなど環境に配慮した設計がなされており、大きく風穴の空いた入母屋造りの外観が独特で、文化・芸術の街にふさわしい佇まいとなっています。このうちホール棟内の農村舞台は、香川県指定有形・無形民俗文化財である直島女おんな文ぶん楽らく(人形浄瑠璃)の3.住民生活の満足度を高める取組み直島町は、昭和44年以降、玉野市の英断により県境を越えた友情の水の供給を受けられることになり、海底導水管の布設によって安定した水資源を確保することができています。また、下水道整備にも力を入れており、令和4年度末の汚水処理人口普及率は98.9%で、ほぼ全世帯に普及しています。これは香川県平均81.1%と比較しても高い水準です。「トイレがきれい」ということは、住民生活のみならず、観光振興を陰で支える重要な要素ではないかと思われます。練習や公演に利用されるなど、一体整備された集会所棟と合わせ、島での生活を豊かなものにしています。このほか、子育て世帯への支援策を充実させることは基より、暮らしや防災に関する情報の伝達手段として、全世帯にタブレット端末を配布するなど、安心・安全で豊かな生活環境を整え、住民の満足度を高めています。4.移住・定住促進の取組み直島町による産業・観光振興、住民の満足度向上などの取組みによって、島の総合的な魅力度が高まり移住者が増加しています。移住・定住促進策として町が行っている宅地分譲や空き家バンクにおいては、物件がすぐに売り切れる人気ぶりとなっています。この様なことから、令和2年の国勢調査においては、年少人口や生産年齢人口が5年前に比べてほぼ横ばいで推移するなど、人口減少に苦しむ離島が多い中にあって、人口を維持する結果に繋がっています。直島町
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