ファイナンス 2024年6月号 No.703
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※ 財務総合政策研究所では、2023年11月から2024年5月まで開催した「日本経済と資金循環の構造変化に関する研究会」における議論を踏まえた報告書をとりまとめ、2024年6月中旬に、財務総研HPで公表する予定としております。過去の「PRI Open Campus」については、 財務総合政策研究所ホームページに掲載しています。https://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/index.htmlPOLICY RESEARCH INSTITUTE, Ministry Of Finance, JAPAN・(2)については、特に技術獲得型M&Aを行った場合、現地でより高付加価値な製品の生産が可能となり、付随する現地法人向け輸出品も高付加価値化していくことが見込まれる。・(3)については、海外での再投資が現地での増収増益に結び付き、連結ベースでの時価総額が上昇することで、グローバル企業としての企業価値向上が実現し、それによる国内設備投資の増加が輸出の増加につながるという好循環が想定される。「資金循環の国際比較」伴 真由美 財務総合政策研究所主任研究官ほかせた場合、収益の85%を課税ベースから控除できる制度が適用されたが、海外から米国内への還流が大幅に増加したものの、還流した資金が米国内の投資や雇用の増加に貢献したか否かははっきりしないとする研究結果がある。財務総合政策研究所の伴主任研究官からは、米国、ドイツ、スイス、中国、韓国の資金需給構造の特徴を整理し、日本と比較し報告しました。具体的には、以下の通りです。・家計部門については、各国とも高齢化が進む中であっても、資金余剰が継続。日本同様に、高齢者・女性の労働参加率が増加傾向にあり、所得の伸びの維持に寄与している可能性。・企業部門については、資金余剰が日本のような規模で生じている国は無い。韓国・スイスでは、国際競争力の高い産業による活発な設備投資などを背景に、多くの期間で資金不足が継続。ドイツでは、年によって資金余剰が生じているが、余剰幅は日本より小さい。・海外部門については、資源輸入国であるドイツ・韓国では、日本同様に、資源価格の高騰により経常収支が縮小。他方で、スイスは資源輸入国であるものの、国際競争力の高い産業を擁することを背景に、経常収支の黒字幅が維持されている。・所得収支の黒字額について日本を上回る国は無かった。日本の対外直接投資の残高は、米国・ドイツ・中国・スイスを下回るものの、対内直接投資の残高が各国を大幅に下回ることが背景と考えられる。・政府部門については、日本同様に、高齢化が進む韓国・中国では、政府の支払が対GDP比で増加し、近年、資金不足主体に転じている。他方、ドイツ・スイスでは、高齢化が進む中でも、経常収支黒字の水準がおおむね維持されており、債務ブレーキ制度が導入される中で支払や資金過不足の幅が抑えられている。 58 ファイナンス 2024 Jun.財務総合政策研究所

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