ファイナンス 2024年6月号 No.703
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PRI Open Campus ~財務総研の研究・交流活動紹介~ 32ファイナンス 2024 Jun. 53[官学連携セミナーの様子]済学者たちが現在の日本経済について注目している点を直接自分の肌で感じることができました。また、セミナーに参加されていた国際マクロ経済学で著名な研究者から、私たちの共同研究に関して有意義な意見をいただくこともできたので、今後の研究に活かしたいと思っています。林:桃田さんは業務の中で、財務省の若手職員や、私のような民間企業出身者に向けて、経済学の知識の指導を行っていただきました。その時のご経験をお聞かせください。桃田:経済学の研究者というバックグラウンドを持つ者として、財務省の若手職員や民間企業出身者たちに経済学の知識を共有しています。毎年4月から6月に行われる財政経済理論研修では、研修生が財政経済に関する研究論文を執筆することになっています。一定程度の経済学の水準を満たした論文の執筆が求められますが、経済学を深く学んだことがない人にとっては難易度が高いため、私や吉元さんが少しサポートするイメージです。その中で、皆さんとのコミュニケーションを通して私自身が学ぶこともたくさんありました。経済学の指導自体も今後の教員生活に役立つと思いますし、皆さんの職務経験に基づく興味深いお話をたくさん伺うこともできました。私が一つアイディアを出せば、皆さんからも一つアイディアが返ってきて、新鮮な意見に触れることができる。そういう感覚でいつもお話させていただいておりました。林:私自身も桃田さんに様々なことを教えていただき大変お世話になりました。桃田さんも吉元さんも、経済学全般に広くアンテナを張っていらっしゃるので、誰のどんな質問にも的確に回答していて本当に尊敬しています。困ったことをすぐに相談できる身近な存在は、私のように初めて研究を行う者からすると大変心強いです。さて、桃田さんは2月末で財務総研を離れ、3月からは広島大学で助教としてお勤めになりますね。離任後の構想などはありますか?桃田:今回、文部科学省の卓越研究員事業に採択され、3月から広島大学経済学部で助教として勤めることになりました。卓越研究員事業の目的の一つとして、若手研究者が自らの研究を通して、産官学連携に寄与していくことが期待されています。私の場合、財務省で働いた経験もありますので、主に官学連携に取り組んでいこうと考えています。そんな官学連携への取り組みとして、早速3月に広島大学で「官学連携セミナー」を開催する予定です。中国地方の行政機関をいくつかお招きするとともに、財務総研スタッフにもご参加いただき、学術研究機関である広島大学の教職員とのやりとりの中で、お互いに研究の質を高めていく一助になればと思っています。(後日談)桃田:2024年3月22日に広島大学にて官学連携セミナーを開催しました。中国地方の行政機関や、財務総研スタッフにお越しいただき、広島大学の教員や一般の参加者と活発な議論が行われました。長時間にわたるセミナーでしたが、最後まで質問が絶えず、充実した内容で終えることができました。次回開催では、広島大学からの報告者の任命や、討論セッションの準備など、さまざまなアイディアが提案され、定期的な開催に向けて更なる連携を図ることで合意いたしました。今回のセミナーは、官学連携の名にふさわしいものとなったと考えています。

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