50-5-10-15321064206543210-1(図表3)米国債金利とOIS(出所)Bloomberg, CBO(出所)・Bloomberg・van Binsbergen, Jules H., William F. Diamond, and Marco Grotteria. 2022.“Risk-free interest rates.”Journal of Financial Economics, 143, 1-29.・Du, Wenxin, Joanne Im, and Jesse Schreger. 2018.“The U.S. Treasury Premium.”Journal of International Economics, 112, 167-181.・Duffie, Darrell. 2017.“Financial Regulatory Reform After the Crisis:An Assessment.”Management Science, 64(10), 4835-4857・ Klingler, Sven and Suresh Sundaresan. 2023“Diminishing treasury convenience premiums:Effects of dealers’ excess demand and balance sheet constraints.”Journal ・松岡 秀明「なぜ米国債はグローバルな安全資産なのか」PRI Open Campus 13 『ファイナンス』 財務省広報誌 2022年11月(%)1.81.51.20.90.60.30-0.32007of Monetary Economics, 135, 55-69.・米国ではコロナ禍での財政拡張に伴い、基礎的財政収支赤字が拡大し債務残高が増大した。リーマン・ショック以降、低金利環境が継続していたが、ここ数年でリーマン・ショック以前の水準まで国債金利が上昇しており、債務残高の増加と相俟って、利払い負担が増加している(図表1)。・国債は他の資産に比べて流動性や安全性が高いとされる。こうした流動性や安全性は、国債の価値を高め、国債金利を下押しする要因となる(コンビニエンス・イールド/流動性プレミアム)。特に米国債は、基軸通貨ドルに対する信認からプレミアムが増大している可能性があり、理論上、米国債金利は他国債金利以上に下押しされやすいものと考えられる。しかし、格付けの引き下げなどを背景に、国債の流動性や安全性が低下すると、プレミアムの縮小と国債金利の上昇を招く可能性がある(図表2)。・リーマン・ショック以降、リスク・フリー・レートのベンチマークの一つであるOISレートと、T-Bill金利との間のスプレッドが縮小している。FRBが補完的レバレッジ比率規制を導入した2015年以降、プライマリー・ディーラーが巨額の米国債を吸収することが難しくなり、コンビニエンス・イールドが縮小した可能性がある(図表3,Duffie(2017), Klingler and Sundaresan(2023))。・OIS自体にもコンビニエンス・イールドが含まれている可能性が有り、OISとT-Bill間の差を取った値は、T-Billのコンビニエンス・イールドよりも過少になっているものと考えられる。van Binsbergen et al.(2022)は、S&P500等のリスク資産の利回りから、OISよりも厳密なリスク・フリー・レートを推計し、コンビニエンス・イールドがリーマン・ショック時に上昇したことを示した(図表4)。・2000年代、為替リスクをヘッジした他国の国債金利と米国債金利の間にはプラスの乖離(米国債プレミアム)が生じており、米国債は相対的に低い収益率にも拘らず運用されてきた。近年、他国比で米国債の供給量が増加したことなどを背景に、米国債プレミアムは縮小傾向にある(図表5,Du et al.(2018),松岡(2022))。(%)20072010201320162019(%)20072010201320162019OIS-T-Bill スプレッドT-Bill(右軸)OIS(右軸)PB黒字対GDP比6カ月物国債金利2016(注)T-BillとOISともに6カ月物201020132019(%)120906030020222007201020132016(%)20222007201020132016債務残高対GDP比純利払費対GDP比(%)2022(注)国債金利は1年物リスク・フリー・レートはvan Binsbergenet al.(2022)の推計値(図表4)米国債のコンビニエンス・イールド(%)(%)1.8651.541.230.920.610.3002004200620082010201220142016201820192022国債は流動性や安全性が高く、その分だけ金利が下押しされる特に米国債は基軸通貨ドルに対する信認からプレミアムが増大している可能性国債の流動性や安全性の低下は、コンビニエンス・イールドの縮小と国債金利の上昇を招き得る。(注)図表2は、以下の文献での議論を参考に作成・服部孝洋「リスク・フリー・レート(RFR)入門-TONA、TORF、OISを中心に-」『ファイナンス』財務省広報誌2021年12月・van Binsbergen, Jules H., William F. Diamond, and Marco Grotteria. 2022. “Risk-free interest rates.” Journal of Financial Economics, 143, 1-29.・Reis, Ricardo. 2021. “The Constraint on Public Debt When r < g But g < m.” LSE manuscript.20192022コンビニエンス・イールドリスク・フリー・レート(右軸)国債金利(右軸)仮想的な無リスク資産の利回りコンビニエンス・イールド流動性プレミアムリスク・フリー・レートプレミアム(ベーシスポイント)1801501209060300-30-602000200220042006200920112013201620182020(注)米国債プレミアム=(他国金利-米国金利)-フォワード国債金利リターンリスク・フリー・レート高リスク資産低リスク資産利回り利回りリスク国債金利対日本国債対英国債対ドイツ国債(図表1)リーマン・ショック以降の米国連邦政府の財政の動向(図表2)コンビニエンス・イールド/流動性プレミアムの概念図(図表5)米国債プレミアム 42 ファイナンス 2024 Jun.米国財政の動向と各種金利概念の整理米国債のコンビニエンス・イールド大臣官房総合政策課 調査第一係係員 篠原 裕晶本稿では、米国債金利に焦点を当てつつ、各種推計を参照しながら米国財政について論じる。コラム 経済トレンド120米国の国債金利と財政の関係について
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