ファイナンス 2024年6月号 No.703
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・ 内閣府[2013]「世界経済の潮流 2013年I −成長力回復への課題−」9-76-43-19-76-43-19-76-43-19-76-43-19-73-16-49-76-43-121-0121-0121-0121-0121-0121-01 コラム 海外経済の潮流 151(注) 文中、意見に及ぶ部分は筆者の私見である。また、誤りについては筆者に帰する。(参考文献)・欧州委員会・ 欧州中央銀行(European Central Bank), “Key ECB interest rates”, “Monetary policy decisions”, “The euro area bank lending survey(BLS)”.(注)値はDI。 2000年1月から調査対象年の2016年12月までの平均を基準としている。直近月の水準   や趨勢、直近月と前月等との比較による上昇・低下により、足元の消費者の景況感が判断される。(出所)欧州委員会(注)金融機関に対する実績調査結果。家計は住宅ローンの需要の実績値(出所)欧州中央銀行2011年11月利下げ開始▲1.8▲6.8▲11.8▲16.8▲21.82012年12月▲21.520112012201350403020100▲10▲20▲30▲40▲502011年11月利下げ開始2011201220142015家計の貸出需要企業の貸出需要201320142015+12▲3+4▲102016実質GDP(前年比:%)消費者物価上昇率(前年比:%)20162024年+0.6%+2.3%2025年2026年+1.5%+1.6%+2.0%+1.9%ファイナンス 2024 Jun. 41以上、直近(2011年~2016年)の欧州中央銀行による政策金利引き下げ時期の経済動向を振り返った。そのうえで足元の動きを概観する。欧州中央銀行は2024年3月、経済及び物価について見通しを公表した。同見通しにおいて欧州中央銀行は、2024年に消費者物価上昇率は一層減速し、賃金上昇率は落ち着きつつも安定して上昇するとした。実質可処分所得については、増加することにより消費が増え、ユーロ圏の経済は徐々に回復を取り戻していくとした。【図表7】【図表7】欧州中央銀行による経済及び物価見通し(2024年3月)他方で欧州中央銀行は、ユーロ圏の経済が下方に傾くリスクも存在すると指摘した。2024年3月の金融政策を決定する会合の議事要旨で欧州中央銀行は、ロシアによるウクライナ侵略や中東での紛争は地政学的リスクであるとし、とりわけ中東における地政学的緊張の高まりが短期的にエネルギー価格と輸送コストを押し上げ、物価が上昇する可能性があると指摘した。以上のとおり欧州中央銀行による2011年から2016年の政策金利の引き下げ時期の経済、物価とこれらに関連する動向を顧みると、政策金利の引き下げ局面においては経済、物価は堅調に推移したことがみてとれる。足元では、2024年3月に政策金利が据え置かれ、2023年10月以降2024年4月まで政策金利が据え置かれている。2024年3月には欧州中央銀行によりユーロ圏経済が2024年から2026年に回復するとの見通しが示された。一方では、下方リスクも指摘されたところである。政策金利の据え置き後の動きについては注意深く監視していくことが欠かせない。(2) ユーロ圏の個人消費の増加と消費者マインドユーロ圏の個人消費の増加を消費者マインドからみる。消費者マインドを表す消費者信頼感指数をみると2012年12月に底打ちを示し、同月以降、2015年4月までの28か月にわたりおおむね回復基調が続いた。【図表5】【図表5】ユーロ圏 消費者信頼感指数(2000年1月~2016年12月平均=▲11.8)(3) ユーロ圏の総固定資本形成の増加と貸出資金需要このころの銀行による貸出調査をみると、家計及び企業の貸出需要は2012年4-6月期に底打ちとなった。政策金利の引き下げ開始(2011年11月)からおおむね2年半が経った2014年4-6月期には家計、企業の貸出需要は共に、需要を増やした割合が需要を減らした割合を超えてプラスに転じた。【図表6】【図表6】ユーロ圏 家計及び企業向け貸出資金需要実績(0<需要増、0>需要減)貸出需要増の要因について金利との関係の調査が開始された2015年1-3月期以降、2016年10-12月期までの要因として、金利が低い水準であったことが挙げられた。欧州中央銀行による政策金利の引き下げが背景にあると考えられる。以上のことを踏まえると、2011年から2016年の時期は、(1)及び(2)から、個人消費は、実質賃金がプラスとなり家計の可処分所得が増加したこと、消費者マインドが改善したことで増加したと考えられる。(3)から、総固定資本形成は、金利が低い水準であったことで増加したと考えられる。4.結語

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