*1) 本稿では、政策金利は「メイン・リファイナンス・オペ金利」を指す。民間の銀行が欧州中央銀行から1週間資金を借り入れる際の金利を指す。*2) ユーロ圏の消費者物価指数の前年同月(年ベースのときは前年)と比べた増減率。*3) 2011年当時の欧州中央銀行の物価目標は「2%未満かつ2%近傍」としていた。2021年7月に物価目標を「2%かつ上下対称」として上下に乖離が許容される対称的なものに変更した。*4) 2011年3月:総合指数+2.7%、エネルギー価格+13.0%(前年同月比)2011年6月:総合指数+2.7%、エネルギー価格+10.9%(前年同月比) 141520101113(出所)欧州中央銀行12161718192021222324ファイナンス 2024 Jun. 39ロシアによるウクライナ侵略を背景とした物価上昇が加速する中、欧州中央銀行は、2022年7月から2023年9月にかけて政策金利*1を段階的に引き上げていた。しかし、消費者物価上昇率*2は、9月は4.3%と2022年10月(10.6%)から減速が続いたことから欧州中央銀行は2023年10月、政策金利を据え置いた。欧州中央銀行の政策目的である物価安定の基準は消費者物価上昇率2%であるところ、消費者物価上昇率はその後も減速傾向が続き、2024年4月には2.4%にまで減速している。欧州中央銀行は2024年4月会合において政策金利を据え置いたが、同会合の声明文で、「物価が持続的に目標に収斂しているという確信が一層高まれば、政策金利の引き下げが適切となる」と表明した。本稿では、過去の政策金利の引き下げ局面のうち直近の引き下げ局面である2011年11月から2016年3月に焦点を当て、2011年から2016年の欧州の経済動向と、2024年4月の政策金利の据え置きまでの欧州経済を概観する。【図表1】【図表1】欧州中央銀行の政策金利の推移(%)5.04.54.03.53.02.52.01.51.00.50.0欧州中央銀行は2011年4月及び7月に各0.25%ポイントの政策金利の引き上げを行い、その理由について、「ユーロ圏の予想物価上昇率を目標*3に沿った形で安定化させることに寄与するため」と述べた。当時の消費者物価上昇率は、エネルギー価格の上昇が主因となり、目標の2%を上回って推移していた*4。政策金利の引き上げから4か月後の2011年11月には、欧州中央銀行は0.25%ポイントの政策金利の引き下げを行った。その理由について欧州中央銀行は、「消費者物価上昇率は依然として加速しているものの、2012年には2%を下回る見通しであること、金融市場の緊張が継続することで2011年後半から2012年にかけてユーロ圏の経済が減速するとの見通しを踏まえ、政策金利の引き下げに転じた」と言及した。2011年11月以降も経済の減速リスクに対処する観点から2016年3月まで政策金利を段階的に合計1.50%ポイント引き下げた。欧州中央銀行が政策金利を引き下げた2011年から2016年までのユーロ圏の経済動向をみる。ユーロ圏全体の実質GDPの動向をみると、「2011年10-12月期以降、南欧諸国における住宅バブル崩壊の後遺症や財政緊縮の影響により総固定資本形成を中心とした内需の縮小から景気の低迷が続いている。1.はじめに海外経済の潮流 151大臣官房総合政策課 海外経済調査係 折原 健太2. 欧州中央銀行による政策金利の引き下げ局面(2011年~2016年)の政策金利3. 欧州中央銀行による政策金利の引き下げ局面(2011年~2016年)の経済欧州中央銀行による2011年~2016年の 政策金利引き下げ局面における欧州経済の動向
元のページ ../index.html#43