ファイナンス 2024年6月号 No.703
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す*23。兵庫県については、「阪神大震災の復旧・復興関連の起債の償還が続いており、財源確保のため毎年巨額の公募債発行を迫られている」としたうえで、入札が導入された経緯として「複数の証券会社や銀行などと発行条件を協議して決める『シンジケート団(シ団)方式』やシ団方式に比べ公募債の引き受け金融機関数を絞る『主幹事方式』よりも競争原理が働きやすい『入札』を中心に据え、金利負担を抑える方針」と報道されています*24*25。10 もっとも、2010年以降、定時償還方式に基づく地方債(定時償還債)の発行も見られています*21。定時償還債は、徐々に返済していくローンのような形をとり、均等債と表現されることもあります。この場合、満期一括償還方式とは異なり、徐々に返済していくことから、減債基金が求められていません。図表8 大阪府の利回りの推移(東京都との比較)(%)1.61.41.20.80.60.40.2-0.2-0.4201020112012*20) 市場公募地方債は1992年度以降、すべてが満期一括償還方式とされましたが(江夏(2007)などを参照)、2013年度から定時償還債が再び発行されています。*21) 日本経済新聞(2013/10/7)「京都府、初の公募定時償還債発行へ 年限20年 10月中旬以降に起債」によれば、「大和によると、市場公募での定時償還債は地方公共団体として初めて」と指摘されています。*22) 日本経済新聞(2004/6/26)「神奈川県、20年物市場公募債―入札方式、初の起債」を参照。*23) 日経公社債情報(2006/12/18)「〈地方債、試行錯誤する条件決定〉横浜市は3方式併用」*24) 日本経済新聞(2007/4/19)「地方公募債発行方式、兵庫県、入札中心に―今年度から、利率を抑制」を参照。*25) 兵庫県の入札方式の詳細については神戸市行財政局財政部財政課(2012)を参照。201320142015201620172018スプレッド(①-②)東京都(②)201920202021大阪府(①)202220232024ファイナンス 2024 Jun. 27引合方式入門例えば、神奈川県については、超長期の市場公募地方債を入札で発行する初めての事例とされており、「透明性の向上とコスト削減効果」が背景とされています*22。横浜市については、個別条件決定に移行した結果、5年債は入札、10年債はシ団割当、超長期債は主幹事方式という3方式を組み合わせる方式を採用し、5年債を入札とした理由として「5年債は信用金庫や信用組合など他の年限に比べて投資家層が厚いため、透明性が高い方式として採用した」とされていまBOX 満期一括償還方式と定時償還方式市場公募地方債は、基本的に、満期一括償還方式が取られています*20。満期一括方式に基づく地方債(満期一括債)のキャッシュフローは、国債を含む、普通の債券のキャッシュフローと同じであり、満期に元本を一括して返済します。満期に一括して返済するがゆえ、返済に備えて基金を積む必要があり、減債基金の設立が求められています。満期一括方式の場合、実質的に30年償還を前提とし、毎年30分の1ずつ減債基金に積み立てていくルールが用いられています。

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