ファイナンス 2024年6月号 No.703
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ダッチ方式で決定した金利をシ団引受の金利に適用ファイナンス 2024 Jun. 25*15) 入札の参加者が価格で応札するプライス・ダッチ方式については、例えば物価連動国債などで用いられています。*16) 服部(2023)の第8章のBOX 2を参照してください。*17) https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/c-zaisei/chihosai/pdf/061030s_3.pdf図表6 引合方式の概念図引合方式入門引合方式で実施される入札ではダッチ方式(イールド・ダッチ方式)が用いられています。ダッチ方式とは落札者が全員同じ値段で購入するオークションの方法です。具体的には、入札に際しては、証券会社や銀行等、参加者がシステムを通じて応札します。そして利回りが低い札から順番に落札して、入札により発行する60億円になる金額まで落札します。重要な点は、落札者が購入する利回りは、入札により発行する60億円に丁度達する札、すなわち落札できたうち最も利回りが高い札で定まり、それが全落札者に一律に適用される点です(ダッチ方式については日本国債の入札でも40年債と物価連動債において用いられていますが、その詳細は、3節を参照してください)。引合方式では、(プライス・ダッチ方式*15ではなく)イールド・ダッチ方式が用いられていますが、この理由としては100円での発行を可能にすること等が考えられます。市場公募地方債の場合、基本的には、発行価格が100円(パー発行)となる点が特徴ですが、入札の場合、参加者が価格で応札すると結果的に発行価格が100円にならない可能性があります。一方、金利で応札すればその金利を表面利率とすることで、100円発行が可能となり、他の公募地方債で発行されるように単価100円での発行が可能になります(服部(2023)でも説明したとおり、イールド・ダッチ方式はパーに近い発行を可能にする仕組みです*16。なお、国債の場合は入札において単価が100円となるとは限らない点に注意が必要です)。入札の詳細大阪府で用いられている入札の詳細は次の通りです。(1)シ団メンバーは、応募者利回り(単利:絶対値)毎の引受希望額(億円単位)を大阪府に提示。(利回りは0.1bpを単位とする。)(2)一社当たりの応募本数は5本以内とし、上下利回りの差は3bp以内とする。(3)一社当たりの応募下限額は、入札による割当額×当該構成員のシェアとし、一社当たりの応募上限額は、入札による割当総額とする。(4)利回りの低いものから順に募入とし、入札に付する額に達した利回り(以下「募入最高利回り」という。)を基礎に発行条件を算出する。(5)なお、募入最高利回りで応募した構成員毎の応募した金額の総額が、入札による割当予定額を超過する場合は、最高利回りにおける割当額を調整(按分)する。引受シェア決定方法の詳細上記の入札の結果をシ団に適用しますが、その際のシェアについては下記の通り定められています*17。(1)6ヶ月間の引受額/6ヶ月間の発行総額で得られた数値を次の6ヶ月間のシェアとする。(2)幹事について(1)においてシェアを調整した結果、銀行団の上位複数行、証券団の上位複数社を大阪府が幹事として指名する。引合方式の参加者引合方式の参加者は、金融機関や証券会社などで構成されています。シ団メンバーには入札に参加する義務があります。シ団メンバーは、落札により引受総額が多かった場合、次期引受シェアの割合が増えることになります。シ団における引受シェアの割合を増やしたい、幹事になりたいとシ団メンバーが考えているのであれば、引合方式の仕組みは入札に積極的に参加す入札方式シ団方式ダッチ方式で金利を決定

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