ファイナンス 2024年6月号 No.703
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*6) 下記を参照 *7) ここの記載は小西(2011)を参照。*8) 小西(2011)では、竹中総務大臣(当時)が統一条件は公正な取引に適わないと指摘し、2006年8月の総務省地方債課の事務連絡の通知文によって、https://sites.google.com/site/hattori0819/「統一条件交渉は停止され、以後、個別交渉に移行することになる」(p.168)としています。*9) 下記を参照 https://www.chihousai.or.jp/08/pdf/ir_h21_10_29_02.pdfファイナンス 2024 Jun. 23図表3 近年の主たる市場公募地方債の市中発行方式の分類引合方式入門これから数回にわたり市場公募地方債の発行方法について解説していきますが、本稿では入札方式とシ団方式を併用する引合方式に焦点を当て、それを活用している大阪府を事例に、地方債における入札方式を議論します。これ以外の方法については次回以降の論文で取り上げる予定です。なお、筆者らはすでに日本国債の入札について石田・服部(2020)で包括的に取り上げており、本稿は地方債における入札制度を議論することで同論文を補足しています。入札制度そのものを知りたい読者は石田・服部(2020)あるいは服部(2023)を参照ください。筆者(服部)が記載してきた債券入門シリーズは、ウェブサイトにまとめて掲載してあります*6。歴史的には、市場公募地方債の条件決定に関し、総務省と金融機関が交渉をして、金利などの発行条件を決める「統一条件交渉方式」が採用されており、この方式では同じ年限の地方債の条件は発行体(地方自治体)間で同一でした(図表4を参照)。その後、東京都とその他で発行条件を変える、いわゆる「2テーブル方式」に移行しました。東京以外については、東京を除く団体の中で最も発行条件の良い団体の条件が全ての団体に適用されることとなり、その結果、東京都とそれ以外の団体で金利差が生まれました*7。その後、横浜市・神奈川県・名古屋市へと徐々に個別交渉が進み、竹中大臣(当時)の改革により、2006年から個別交渉方式が開始されました*8。これにより、自治体ごとに発行方法の工夫が始まり、地方自治体ごとに発行方法に違いが生まれる大きな契機となりました。本稿で取り上げる大阪府については1952年度に東京都・兵庫県と並んで市場公募債の発行を開始し、1992年度に満期一括償還方式を導入しました(満期一括方式についてはBOXを参照)。引合方式については2006年度に初めて7年債(市場公募債)で導入しました。その後、10年債・5年債について引合方式で発行を開始し、以後、定例債は引合方式で発行がなされています(同時期に、大阪市も引合方式を開始しますが、大阪市の場合、その後、主幹事方式に移行します。引合方式は、他にも例えば過去に兵庫県で導入されていました*9)。図5が大阪府債の発行計画の概要です。大阪府債に2.大阪府で採用される引合方式2.1 歴史的経緯入札方式金融機関が発行条件を入札し、その結果に基づき発行条件が決定引合方式複数金融機関がシ団を構成し、主幹事が投資家と対話の上で幹事方式融合方式地方債を引き受けるシ団方式主幹事方式発行条件を決定

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