AMROの「戦略的方向性2030(Strategic Direction 2030)」の着実な実施が歓迎された。(ABMI)アジア通貨危機において、ASEAN諸国における通貨と期間のミスマッチ(ドル等の外貨を海外から短期で借入れ、自国通貨建てで国内の長期融資を実施)が一因となったことを踏まえ、その解消のため、ASEAN+3域内の現地通貨建て債券市場を育成し、域内の貯蓄を投資へ活用することを促進する取組として、2003年にアジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)が開始された。ABMIの開始以来、ASEAN+3域内の現地通貨建て債券市場は着実に拡大している。(例えば、ASEAN6(ベトナム、タイ、シンガポール、フィリピン、マレーシア、インドネシア)の現地通貨建て債券市場の規模は、20年間で7.6倍に拡大)。本会議は、2000年以降、ASEAN+3の会議と合わせて開催されており、日中韓の3か国で率直な意見交換を行う重要な場となっている。今年は、日本の鈴木大臣、氷見野副総裁の共同議長の下、域内各国の経済・金融情勢及び地域金融協力について意見交換が行われ、日中韓の連携の重要性が確認された。本会議では、日本及びADBのメンバー国である太平洋島嶼国のうち11か国(注)の財務大臣等に加え、同地域の重要なパートナーとして太平洋島嶼国が期待を寄せるADBが参加し、「気候変動と質の高いインフラ」、「金融の健全性と包摂性」、「債務の持続可能性」といった太平洋島嶼国が直面する開発課題と、今後の日本と太平洋島嶼国の協力の可能性について率直な意見交換が行われた。(注) キリバス共和国、クック諸島、サモア独立国、ソロモン諸島、ツバル、トンガ王国、パプア・ニューギニア独立国、パラオ共和国、フィジー共和国、マーシャル諸島共和国、ミクロネシア連邦同意見交換においては、鈴木大臣より、こうした開発課題について、今後の日本の二国間及び国際機関等を通じた多国間の太平洋島嶼国に対する協力施策を紹介した。これに対して、参加者からは、日本と太平洋島嶼国の財務大臣が初めて一堂に会し、率直な対面の議論を通じて、相互理解を深め、関係を強化することができたことへの歓迎が表明されるとともに、これまでの日本の二国間支援、特に新型コロナウイルスのパンデミック下の困難な時期における日本の支援に対する謝意が示された。また、太平洋島嶼国の多くが、 20 ファイナンス 2024 Jun.ウ. 【第3の柱】アジア債券市場育成イニシアティブ本会議では、「ABMI中期ロードマップ2023-2026」の下での取組が進捗していることを歓迎し、現地通貨建て債券の発行の拡大や新たな取組を行う信用保証・投資ファシリティ(CGIF)の努力が称賛された。エ.【第4の柱】災害リスクファイナンス(DRF)これまで、日本は、自然災害リスクへの対応に保険スキームを活用し、ASEAN諸国の財務強靭性を向上させることを目的とした「東南アジア災害リスク保険ファシリティ(SEADRIF)」の立上げを主導するなど、自然災害リスクに対する財務強靭性の向上に係る取組を推進してきた。2023年の会議では、頻発化・激甚化する域内の自然災害に対応するため、将来生じうる経済的及び財務的損失に対する強靱性を高める重要性について参加国間で認識が共有され、DRFをASEAN+3財務トラックの定例議題に格上げすることが決定された。本会議では、昨年策定された「ASEAN+3 DRFイニシアティブに係るアクションプラン 2023-2025」の更新が歓迎されたほか、DRFイニシアティブの事務局設置及び河合美宏氏の事務局長選任が歓迎された(その他の議論の内容については、財務省ウェブサイトに掲載されている「共同ステートメント」をご覧いただきたい)。2. 第24回日中韓財務大臣・中央銀行総裁会議3.日・太平洋島嶼国財務大臣会議本会議は、太平洋島嶼国の地政学的重要性が足下で増していることや、本年7月に首脳級の「第10回太平洋・島サミット(PALM10)」が日本で開催される予定であること等を踏まえ、初めての試みとして、日本の主導により、アジア開発銀行(ADB)年次総会の機会を活かして、5月3日(金)に開催されたものである。本会議においては、日本の鈴木財務大臣及び太平洋諸島フォーラム(PIF)議長国であるクック諸島のブラウン首相兼財務・経済運営大臣が共同議長を務めた。
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