ファイナンス 2024年6月号 No.703
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従従来来かかららのの33本本柱柱新新ししいい議議題題シーエムアイエムCMIM:危機時の流動性供給メカニズムアムロディーアールエフDRF:自然災害リスクに対する財務強靭性の向上ファイナンス 2024 Jun. 19アジア太平洋地域における地域金融協力の推進行われ、日本からは、世界経済が、ロシアによる不法かつ、不当で、いわれのないウクライナ侵略や中東地域を巡る情勢といった地政学的緊張や金融資本市場の変動の影響等様々な下方リスクに直面しており、注視が必要であることを指摘した。本会議では、これらのリスクや、外的要因からの負の波及による外国為替市場のボラティリティの高まりが、域内の短期的な見通しに影響を与えうることが確認された。また、域内における財政政策の優先課題として、的を絞った支援を提供しつつ、財政の持続可能性を強化することの重要性が確認された。ASEAN+3地域の金融協力は、従来から下記の3本の柱に沿って議論を行ってきたが、域内金融協力を更に深化させるべく、日本からの提案により、2023年5月の会議において、災害リスクファイナンス(DRF:Disaster Risk Financing)が第4の柱として定例議題に格上げされた。以下、この4本の柱という形で、今回の会議の議論を紹介したい。ア. 【第1の柱】チェンマイ・イニシアティブ(CMIM)1997年に発生したアジア通貨危機を教訓に、ASEAN+3では、2000年に二国間通貨スワップ契約から構成されるチェンマイ・イニシアティブ(CMI)が立ち上げられた。その後、スワップ発動の際の当局間の意志決定の手続きを共通化し支援の迅速化を図るためのCMIのマルチ化契約(CMIM)締結、資金規模の倍増といった機能強化が図られてきた。2023年の日本共同議長下では、パンデミックの経験も踏まえ、自然災害やパンデミックなどの外生ショックに対して迅速に発動する「緊急融資ファシリティ」(RFF:Rapid Financing Facility)創設について積極的に議論し、2024年に入ってからも、RFFに対するASEAN諸国の高い期待を受け、メンバー間で精力的な議論を継続した結果、本会議において、RFFの創設とその制度設計が承認された。イ. 【第2の柱】ASEAN+3マクロ経済リサーチ・オフィス(AMRO)CMIMの実施支援に当たっては、ASEAN+3域内・各国経済のリスクを早期に発見し、各国に改善措置の速やかな実施を求めることが必要不可欠である。このプロセスに貢献するためのサーベイランス機関として、2011年にASEAN+3マクロ経済リサーチ・オフィス(AMRO)が設立された。(その後、2016年に国際機関化)。日本はその設立以来、所長を含めた人材の輩出や拠出金の貢献等を通じてAMROを支援してきている。本会議では、AMROの幹部ガバナンスの包括的な見直しの結果を歓迎するとともに、AMROのテーマ別サーベイランスを担当する新設次長ポストの選任プロセスの進展が歓迎された。また、ASEAN+3財務プロセスへのAMROの事務局的支援機能の強化や、シンクタンクや国際金融機関等とのネットワークの立上げ等、(2)地域金融協力について第1の柱第2の柱第3の柱第4の柱AMRO:上記CMIMを支える経済サーベイランス機関エービーエムアイABMI:現地通貨建て債券市場の育成

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