ファイナンス 2024年6月号 No.703
12/74

通常の手続認定手続の流れ簡素化手続〈権利者は、証拠・意見の提出必要〉輸入申告又は郵便物の提示審査・検査知的財産侵害疑義物品を発見権利者・輸入者に認定手続の開始を通知権利者・輸入者から証拠・意見の提出侵害の該否を認定該当認定非該当認定没収等輸入許可併せて、輸入者に対し、疑義物品が侵害物品に該当するか否か争う場合には10執務日以内にその旨を書面で提出すべき旨を通知権利者・輸入者に証拠・意見の提出期限を通知(輸入差止申立てに係る貨物)輸入者が争う旨の書面を提出した場合輸入者が争う旨の書面を提出しなかった場合〈権利者は、証拠・意見の提出不要〉令和5年10月から、知的財産侵害物品の認定手続において、従来は簡素化手続の対象から除外されていた特許権、実用新案権、意匠権及び保護対象営業秘密に関する輸入差止申立てに係る貨物についても、簡素化手続の対象となった。これにより、輸入差止申立て対象の全ての知的財産が、簡素化手続の対象となった。認定手続とは、知的財産を侵害する疑義物品を税関の審査・検査で発見した場合に、それが知的財産を侵害する物品かどうかを認定するための手続のことである。税関は、疑義物品を発見した際、権利者と輸入者の双方に対して認定手続の開始を通知し、疑義物品が侵害物品に該当するか否かについて証拠・意見の提出を求める。そして、双方から提出された証拠・意見を基に、税関がその物品が侵害物品に該当するかどうかを認定する。該当する場合には税関は当該物品を没収することができ、該当しなければ輸入が許可される。ただし、税関が発見した疑義物品について、権利者から輸入差止申立てが行われている場合には、認定手続において簡素化手続が執られる。この簡素化手続においては、税関が疑義物品を発見した際に、輸入者に対して、簡素化手続を開始する旨とともに、疑義物品が侵害物品に該当するか否かについて争う場合にはその旨を書面で提出すべき旨を書面で通知する。輸入者がこの争う旨の申し出を提出しない場合、税関は、権利者に証拠・意見を提出させることなく、侵害の該否を認定する。一方、輸入者が争う旨の申し出を提出する場合は、通常の認定手続と同様、輸入者、権利者の双方から証拠・意見を提出させ、その内容によって侵害の該否を認定する流れになる。簡素化手続は、通常の認定手続と比べ、「輸入者から争う旨の申し出がない場合には権利者が証拠・意見を提出しなくてもよく、権利者、輸入者及び税関の事務負担が軽減される」との点で、メリットのある制度となっている。近年、特許権と意匠権に係る輸入差止件数が増加しているところであり、権利者にとっては、特に特許権・意匠権に係る輸入差止申立てを行うことにより、簡素化手続を活用することのメリットが大きくなっている。 8 ファイナンス 2024 Jun.簡素化手続の対象を拡大輸入差止申立て対象の全ての輸入差止申立て対象の全ての知的財産が簡素化手続の対象に知的財産が簡素化手続の対象に

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る