➢ 中小企業向けの融資審査手法を学ぶうえで非常➢ 政府系金融機関としての役割や創業支援を含む業務の政策的意義について、本セミナーを通じ、改めてその重要性に気づくことができた。➢ SME Bankとしても日本公庫が取り組んでいる創業支援は重要と認識しており、セミナーの実施をお願いしたい。(2023年6月20〜21日・於 プノンペン)2023年6月にプノンペンで行った第1回中小企業金融セミナーでは、日本の中小企業金融や日本公庫の役割、日本公庫における融資審査手法等についての講義を実施し、定性・定量分析等に関する基礎的な知見・ノウハウを提供しました(図表2)。 PRI Open Campus ~財務総研の研究・交流活動紹介~ 31ファイナンス 2024 May 69▲第一回中小企業金融セミナーの模様(2023年6月)(カンボジア)経済財政省、SME Bankアの中小企業金融アクセス向上・融資審査マニュアルの整備に係る意見交換・助言*9) 本稿において、定性分析とは、経営者へのインタビューや事業所訪問等を通じて企業実態を把握することを指す。定量分析とは、貸借対照表・損益計算書等の財務諸表等に基づき企業実態を把握することを指す。*10) SME Bankの融資商品は、1)SME Bankが融資審査を行う直接融資(Direct Credit Scheme)と、2)民間金融機関が融資審査を行う協調融資(Co-■nancing Scheme)に大別され、直接融資の推進は融資審査にかかる業務負担を増加させ、効率的な処理が必要とされる状況。融資商品についての詳細はコラム(1)参照。*11) すべてのアンケート回答者(25名)が、5段階評価(大変満足・大体満足・普通・やや不満足・不満足)において、「大変満足」または「大体満足」と回答。日程2023年6月20~21日場所プノンペン(SME Bank本店)受講者合計25名(SME Bank職員)講義内容・日本の中小企業金融と日本公庫の役割・日本公庫の融資審査及び債権管理の概要・定性分析、定量分析の演習 等に関する課題を抱えており、各国の中小企業金融を担う政府系金融機関等に対し、日本公庫の有する、定性・定量分析等*9に重点を置いたキャッシュフローベースの融資審査ノウハウを提供してきました。2022年10月、財務総研及び日本公庫のスタッフはカンボジアに赴き、他国における支援実績や日本公庫の持つ融資審査ノウハウをSME Bankや経済財政省の職員等の関係者に説明しました。先方からは、SME Bankが今後支店数を増加させ、直接融資(Direct Credit Scheme*10)に注力していく方針であり、融資審査能力に関する人材育成及び審査業務の向上が喫緊の課題との説明がありました。さらに、同行からセミナーの実施を通じた日本公庫の持つ融資審査ノウハウの提供やマニュアル整備についての協力要請がありました。本要請を受け、2023年6月、財務総研、日本公庫、カンボジア経済財政省及びSME Bankの4機関において協力覚書(Memorandum of Cooperation)を締結しました(本覚書の概要は図表1参照)。(図表1)協力覚書の概要署名機関(日 本)財務総研、日本公庫支援期間2023年6月から2年間目的SME Bankの人材育成及び融資審査業務改善を通じたカンボジ支援内容・セミナーの実施を通じたノウハウの提供(※)英語の原文を和訳、一部抜粋したもの。そして、その実践編として、事業所訪問時のポイントや財務諸表未整備の事業者に対してどのように売上を推測するか等をテーマとした演習にも取り組みました。受講者からは、日本公庫の融資審査手法や業務プロセス等の実務面についての質問が多く寄せられ、日本公庫の取組みを参考に業務改善を図ろうとする積極的な姿勢を感じ取ることができました。受講者向けアンケートでは、本セミナーについて総じて非常に高い評価を得ました*11。また、SME BankのNeav Sokun Chief Operating Officer(COO)からは、以下のコメントを頂きました。また、受講者との対話を通じ、カンボジアと日本では事業環境の違いが金融機関の業務プロセスにも影響していることが分かりました。例えば、カンボジアは事業者の多くが商業登記していないため、誰が代表権を有するのか等についても逐一ヒアリング等で確認する必要があり、日本よりも融資審査の初動に時間を要する旨の話がありました。(図表2)第1回中小企業金融セミナーの概要に有益な内容だった。2. 第1回中小企業金融セミナー
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