イフタール仕様のレストランの様子他方で、温暖な気候の地域に比較的によく見られる傾向ですが、インドネシア人は時間にルーズな一面もあり、それを象徴する一例として、インドネシアには“Jam Karet”という「時間はゴムのように柔軟」という意味の言葉があります。しかし、彼らのいざという時の瞬発力には目を見張るものがあり、ある国際イベントの数日前に視察した時には会場設営がほぼ進んでいなかったにもかかわらず、当日、それは立派な会場に仕上がっていて大変驚かされました。インドネシアは親日国かつ日本と同じアジア圏内にあるため、日本人にとって住みやすい国とよく言われますが、それでも異なる文化の中で生活し、一緒に仕事をする際には、相手の文化や性質を理解・尊重すること、自身の言動が相手にどう写るのか注意を払うことが重要であると感じています。日・インドネシアは1958年に両国間で正式な外交関係を樹立して以降、海洋・民主主義国家として同じ価値観を共有し、伝統的な友好・協力関係を構築してきました。2022年にはG20議長国としてG20サミットを成功裡に主催し、翌2023年にはASEAN議長国を務め上げており、この2年余りで、岸田総理はジョコ・ウィドド大統領と6回の首脳会議を行っています。さらに、同年6月には天皇皇后両陛下が即位後初めての外国への親善訪問としてインドネシアを御訪問されました。今回の天皇皇后両陛下のインドネシア御訪問は、1991年10月の上皇・上皇后両陛下のインドネシア御訪問以来32年ぶりという、両国間で長年培われてきた友好親善関係を深化させ、日・インドネシアの協力関係を一層発展させる記念すべき御訪問であったと思います。また、日・インドネシアの経済交流は1960年代に本格化して以来、アジア通貨危機時や新型コロナウイルスの感染拡大期等の一時期を除いて、約65年にわたり拡大し続けています。日本はインドネシアの最大の貿易相手国の一つであり、日本からは機械設備類、自動車・関連部品、鉄鋼等の工業製品が輸入され、インドネシアからは鉱物性燃料、鉱石等の資源が輸入されています。外務省の海外進出日系企業拠点数調査によるとインドネシアに進出している日系企業数は2,100拠点(2022年10月時点)を越え、国際協力銀行(JBIC)が実施している海外事業展開調査(2023年度)によるとその安定した経済成長を背景としたマーケットの今後の成長性が評価され、中期的な有望事業展開先国としてインドネシアは第5位につけており、引き続き日系企業による進出のポテンシャルの高さがうかがえます。特に乗用車・二輪車の日本メー(3)日・インドネシア関係コラム2ラマダンとイフタールイスラム教徒にとって神聖で、信仰と自制、精神的な浄化に邁進する重要な期間の一つであるラマダン(断食月。アラビア語で「9月」)中は、イスラム教徒は日の出から日没まで飲食を禁じられます。これはイスラム教徒が同じ試練を共有することで連帯感や相互扶助の精神を高めるほか、貧富の別なく等しく空腹や喉の渇きの辛さを味わうことで恵まれない人の気持ちを理解すること等が目的とされます。ラマダン期間中の日没後初の断食を解く食事はイフタール(アラビア語で「断食を破る」)と呼ばれ、どこの家庭でも家族や親戚、友人達とともに普段よりも豪華な食事を囲んで、お互いの結びつきを再確認します。この時期にはホテルやレストランでもイフタール仕様のメニューが用意されており、イスラム教徒以外でも楽しむことができます。 62 ファイナンス 2024 May
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