Ⅰ24過剰不足所定内給与の伸び(前年同期比、%)(図表1)「改善基準告示」における変更点(図表2)輸送力不足の見通し(図表6)年間所得額の推移(図表3)施策による効果試算(図表8)下請の利用状況①下請けは利用していない③3~4次(2024年度分)(出所)国土交通省「「2024年問題」解決に向けて」、内閣官房「物流革新緊急パッケージ」、日本経済新聞「置き配や鉄道輸送、運転手14万人不足補う政府対策」(出所)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」、厚生労働省「毎月勤労統計調査」「賃金構造基本統計調査」、公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会「物流変革の波:1日の休息時間1日の拘束時間1か月の拘束時間原則:293時間最大:320時間・2024年4月から働き方改革関連法の適用により、自動車運転業、建設業、医師において残業時間の上限規制が開始された。人手不足が深刻化する中で、企業等はこれによる対応に直面しており、中でも物流業界は残業規制に加え、改善基準告示によるドライバーの拘束時間等への対応により、輸送力不足が懸念となっている(図表1・2)。・2024年問題への対応に向けて、政府は2023年10月「物流革新緊急パッケージ」を定め、(1)物流の効率化、(2)荷主・消費者の行動変容、(3)商慣行の見直しを3本柱に据え、経済対策による財政面での支援を進めてきた。これら3本柱を中心とした一連の施策により、2024年に不足する輸送力に相当する、約14万人分の輸送力が補填できると見込まれている(図表3)。・本稿では、「物流革新緊急パッケージ」策定に至る背景について、物流業界の雇用環境や商慣行等の現状から思索するとともに、3本柱の一つである「荷主・消費者の行動変容」に焦点を絞り、物流の需要サイドである荷主・消費者側の課題を踏まえた上で、「物流2024年問題」の展望について考察していく。(2024年4月〜)・物流産業の現状整理として、日銀短観の雇用人員判断DIをみると、運輸・郵便業(物流業)は全産業を恒常的に下回っており、2024年問題以前から人手不足が深刻であることが確認できる(図表4)。・運輸・郵便業の賃金は人手不足に伴い上昇はしているものの(図表5)、全産業と比較して低賃金・長時間労働の実態に変わりはなく(図表6・7)、多重下請け構造による賃金の下方バイアスや、ドライバーが行う仕分や検収・検品、荷造りといった附帯作業に対しては、賃金が発生していない等の商慣行が影響しているものと考えられる(図表8・9)。・残業規制に加え、こうした要因が人手不足に拍車をかけ、輸送力不足を招きかねないことから、物流産業を魅力ある職場とし、物流サービスの利便性を維持するため、「物流革新緊急パッケージ」が策定されたと受け止められる。(図表4)雇用人員判断DIの推移(「過剰」-「不足」、%ポイント)1086420▲2▲4▲6▲8▲102024年問題対応に向けた実態調査レポート」改正前継続11時間を基本とし、継続8時間以上原則:13時間以内最大:16時間以内(15時間超は週2回以内)(14時間超は週2回以内)年間拘束時間3,516時間200▲20▲40▲60過剰不足ⅡⅢⅣ2020ⅡⅢⅣ2019ⅡⅢⅣ2021ⅠⅠⅠⅠⅠ0▲50雇用人員判断DI(前年同期差)改正後9時間下限原則13時間以内最大15時間以内原則:284時間最大:310時間原則:3,300時間(万円)520500480460440420全産業運輸・郵便ⅡⅢⅣ2023(図表5)所得(賃金)と人手不足感ⅡⅢⅣ20222019(図表7)年間労働時間の推移(時間)2,4002,3002,2002,1002,0001,900全産業運輸・郵便502019(%)0現状2024年2030年(対策を講じない場合)75502534%全産業運輸・郵便202020212022全産業運輸・郵便20202021202210014%(注)2023年6月2日「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」における試算強化する主な施策自動フォークリフトなどの導入トラックGメンの監視強化4万5,000人分6万3,000人分荷待ち・荷役時間の削減積載率向上モーダルシフト鉄道と船舶の輸送量を倍増再配達削減「置き配」やコンビニ受け共同輸送の促進取りでポイント還元(%)75.81.62023(%)16.92015105012.02023荷物の荷造り仕分け検収及び輸送力補填効果5,000人分3万人分②1~2次④5次以上16.16.50100(図表9)ドライバーが行っている主な附帯業務5016.012.713.6横持ち及びはい作業検品縦持ち「物流2024年問題」と政府による対策方針「物流革新緊急パッケージ」策定の背景大臣官房総合政策課 調査員 木下 裕也/横山 修平本稿では、「物流2024年問題」の現状と課題を整理し、今後の展望について考察する。コラム 経済トレンド119 54 ファイナンス 2024 May「物流2024年問題」の現状と課題
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