ファイナンス 2024年5月号 No.702
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ファイナンス 2024 May 49図表8 財政投融資特別会計(財政融資資金勘定・投資勘定)の仕組み齋藤通雄氏に聞く、国債を巡る資金の流れと特別会計の基礎(後編)*9) ここでは財政融資資金勘定と投資勘定を取り上げていますが、特定国有財産整備勘定も含め、3勘定あります。(出所)財務省「特別会計ガイドブック」等により償還財源が賄われているのに対して、財投債は貸出先の返済が原資であるという点で分かれているということですよね。齋藤 先ほどお話ししたように、税かどうかはおいておくとして、普通国債は何らかの形で償還のために国民に負担をお願いするような形になるものです。GX経済移行債だとカーボン・プライシングなどが償還に使われます。一方、財投債だけはやや特殊な国債で、財投債を発行して調達したお金は、財政投融資で独立行政法人や地方自治体向けの貸付にあてられますので、財投の目線から見ると、財投債を発行して借りたお金を別の人に貸して、貸した先からお金が返ってくる、あるいは利払いをしてもらえることになります。そうすると、自分たちが貸した先から返ってくるお金や払ってもらう金利で、財投債の返済や利払いができる仕組みになります。税などの形で国民に負担を生じさせずに、政府が行っている純粋な金融活動として、まず資金を調達してそれを誰かに貸して、貸したお金が返ってきたところで、調達した資金を返済することができるわけですから、財投債だけは性質が違う国債として整理されることが多いですね。服部 財投の資金は財政投融資特別会計(財投特会)で管理されていますが、国債として出てきた財投債が、財投特会に直入されるわけですね。齋藤 そういうことですね。服部 例えば財投債を発行して調達したお金を、DBJ(日本政策投資銀行)などに5年などの期間で貸し付けるわけですよね。DBJはその資金を5年後に返済して、それが財投特会に入り、それを償還費として国債整理基金特会に繰入れて、財投債を返済するということですね。これは貸し出しをしている金融機関そのものですね。齋藤 今は無くなりましたが、昔は長期信用銀行という業態があって、金融債といわれる債券を発行して資金調達をして貸付を行っていました。まさにそれと似たようなことを財投特会がやっているということです。服部 財投には、産業投資もありますよね*9。齋藤 産業投資は特会としては財投特会ですが、前述の貸出を行う勘定とは分かれていますし、投資の財源も違っていて、財投債の発行で調達した資金は専ら財政融資の貸付にだけ使っていて、産業投資の部分は、NTTやJTといった政府が保有している株式の配当収入などを財源としているので、お金の流れが違いますね。服部 国債の発行収入金を産業投資に回すことはなく、株式の配当収入などを用いることで、国債の信用力に及ばない仕組みになっている訳ですね。図表9が投資勘定の資金の流れですが、基本的には配当金や前年の剰余金に加え、一定の納付金が投資勘定に繰り入れらÿ

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