ファイナンス 2024年5月号 No.702
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ファイナンス 2024 May 47齋藤通雄氏に聞く、国債を巡る資金の流れと特別会計の基礎(後編)*6) 当該法律の第69条に復興債の発行根拠規定がありますが、平成23年度分の第1項と平成24年度以降分の第4項が書き分けられており、更に「特別会計に関する法律」第228条において、復興財源確保法第69条第4項の復興債(=平成24年度分以降)だけが復興特会の負担とされています。*7) 下記を参照。 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=505AC0000000032GX経済移行債と特別会計の関係服部 GX経済移行債についてはどうでしょうか。齋藤 GX経済移行債の発行会計は、エネルギー対策特別会計(エネルギー需給勘定)ですが、この国債の発行根拠法は、(一般法である)「特別会計に関する法なお、復興債の場合はやや事情が特殊で、復興財源を賄うための復興債による資金調達は平成23年度(2011年度)から始まった一方、復興事業に伴う歳入・歳出を管理するための復興特会の設置は平成24年度(2022年度)になってからです。このため、復興債には、一般会計負担の復興債と特会負担の復興債の二種類が生じてしまいました。詳細は政府の法令検索サイト等で「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」(「復興財源確保法」)を参照していただきたいのですが*6、復興債のうち平成23年度分(2011年度分)だけは一般会計負担と整理されています。ただ、復興債は、復興債のための償還財源が確保されているので、一般会計負担分も60年償還ルールの対象とはされておらず、復興債用の償還財源で不足する部分を国債整理基金特会で借り換えています。服部 復興債は、60年償還ルールには則らない一方で、返済の期限が明示的に決まっていますよね。齋藤 復興債等の償還という規定(第71条)が復興財源確保法にあって、端的に言うと令和19年度(2037年度)までの間に償還するものとすると書いてありますので、返し終わる期限が決まっています。ただし、全部返し終わる期限は決まっていますが、その途中のところがきっちりと決まっているわけではないんです。一般会計だと60年償還ルールで100分の1.6ずつ機械的に減らしていくという制度ができているのに対して、復興債の場合は、毎年実際どれくらい入ってくるのか、まだこれからの部分もありますが、償還財源として予定されているものが順次入ってきて、入ってきた分はそれで返し、足りない分があれば借り換えて、借り換えた分は更に後の年度に入ってきた償還財源で返していく、という仕組みです。律」(の改正によるもの)ではなく、GX推進に関する特別立法(「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」*7;GX推進法)によって定められています。GX経済移行債の発行については、この法律の第7条に規定されており、「エネルギー対策特別会計の負担において」とあることで、償還財源を特会自身で手当てする(一般会計の一般財源に依存しない)ことが明確化されています。服部 GX経済移行債の場合は、2050年までに返済するという大目標を掲げていますよね。齋藤 GX経済移行債及びその借換債については、GX推進法の中で、化石燃料賦課金と特定事業者負担金の収入で、令和32年度(2050年度)までの間に償還する、ということが決まっています。これも復興債と同様に、返し終わる期限はあるものの、途中どのように返していくのかがきっちりと決まっているわけではありません。服部 そうすると、復興特会の方がエネ特よりシンプルに感じるので、特別会計と償還の関係を最初に考える上で適している気がします。エネ特には複数の勘定がありますので。齋藤 そうですね。エネ特は元々特会として存在していて、いろいろな事業をやっており、勘定も分かれているところに、新しい業務としてGXというものが付け加えられているので、東日本大震災の復興関連だけを経理している復興特会よりは、色々なものが歳入・歳出の部分に出てくることになり、エネ特は複雑です。服部 図表7がエネ特の仕組みですが、これを見るだけでもその複雑さがわかります。エネ特の所管官庁は経産省だけでなく、環境省と、内閣府も含まれていますよね。齋藤 どの特会をどの省庁が所管しているかは、特会の予算書を見ると、全部書いてあります。エネ特全体としては、内閣府、文部科学省、経済産業省及び環境省の所管ですね。先ほど申し上げたGX推進法が、GX・脱炭素を政府として進めていくためのベースになる法律です。この法律は経産省の所管で、その中にGX経済移行債の規定もあり、そういう意味では予算

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