ファイナンス 2024年5月号 No.702
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ファイナンス 2024 May 41図表1 東日本大震災復興特別会計の仕組み(資金の流れ)齋藤通雄氏に聞く、国債を巡る資金の流れと特別会計の基礎(後編)(出所)財務省「特別会計ガイドブック」の赤字国債などの償還とは別立てにしましょう、という考え方がありました。当時は民主党政権下でしたが、財政健全化に対する意識もあったので、最終的に、東日本大震災からの復興のために、一時的に借金はするけれども、通常の一般会計の借金とは別立てに返済財源を確保しましょう、という話になったわけです。そのために、復興特別税という形で広く国民に負担をお願いするとともに、一般会計の歳出を削減したり既存の特会の剰余金を繰り入れたりするとか、あるいは、国有財産の売却収入、例えば政府が保有しているJTの株式や、売却はこれからですが東京メトロの株の売却収入などがあれば、それも復興債の償還財源に繰り入れるといった形で、枠組みを作ったわけです。そういう意味では、東日本大震災の場合は、特定の支出と収入を紐付けるという枠組みに馴染みやすかったので、紐付けたものを整理するための一つの箱として、特会を作って経理することにしたわけです。服部 2010年ごろは野田政権下で、財政再建を目指す機運がありましたね。齋藤 民主党政権時代は財政規律に対する意識は強く、徒に国債を発行するよりは、予算の無駄を削りましょうということをやっていました。「事業仕分け」で、スパコンが世界2位ではダメなのか、といった発言も話題になりましたね。服部 一般会計の枠組みの中で処理するのと、特会として分けて管理するのとどちらが望ましいかは、ケースバイケースということですね。当時の国債課はどのような役割を果たしていたのでしょうか。齋藤 特会にするかしないかは、財務省の中では一義的には主計局の話しです。当時の国債課が復興債関連で何をやっていたかというと、新しく発行される復興債という国債を、どういう形で出すのかを決める、ということです。つまり、復興債の出し方として、一般会計分など他の国債と一緒に混合発行するのかどうかとか、何年物の国債で出すのか、といったことなどです。当時は、東日本大震災からの復興を支援しよう、という国民感情も強かったので、機関投資家向けにマーケットで発行される復興債だけでなく、復興応援国債として目的国債を個人向けに出して、買っていただいたお金を必ず全部復興に使いますよ、という方法もとりました。服部 今のGX経済移行債みたいな形で、個人向けではなくて、マーケットに復興債だけを他の債券とは異なる形で出すかどうかについても議論があったのでしょうか。齋藤 そういった議論はなかったと記憶しています。東日本の復興支援をしたい、という個人の方にアピールをして、個人向け国債を買っていただいて、復興の原資とする、ということはしました。しかし一方で、機関投資家の方々には、普通の国債とは別に、復興支援の国債だから買うというインセンティブはあまりなかったのではないでしょうか。企業目線からすると、ÿ

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