*1) 例えば、朝日新聞「復興予算の特会化、安住財務相が理解示す 自公が要求」(2011年10月24日)などを参照。野村資本市場研究所研究理事 齋藤 通雄/東京大学 服部 孝洋東日本大震災復興特会服部 齋藤様は、東日本大震災復興特会ができたときに、国債課にいらっしゃいましたよね。国債課ではどのような業務をなされていたのでしょうか。齋藤 2011年、まさに東日本大震災が発生したときには国債業務課長として入札等資金調達の現場責任者で、復興特会ができたときには国債企画課長に異動していました。服部 災害復興のために、東日本大震災復興特会を設け、政府は復興債を発行して資金調達をすることになりました。復興のために特別会計を設けた理由としては、東日本大震災の復興に関し、例えば、歳入と支出の関連がつけやすく、特別会計にしたほうが資金の流本インタビューの目的我が国における国債制度を理解しようとするにあたり、特別会計についての理解が必要になることが少なくありません。もっとも、特別会計は複雑であり、独力での理解が困難だと指摘されることも少なくなく、さらに、初学者に向けた文献がないのが実態です。本稿は、国債を専門とする経済学者である服部が、国債制度だけでなく、日本の財政制度についても造詣が深い、財務省前理財局長(現在は野村資本市場研究所研究理事)の齋藤通雄氏にインタビューし、特別会計の理解を深めることを目的としています。今回は「齋藤通雄氏に聞く、国債を巡る資金の流れと特別会計の基礎(前編)」の続編になりますので、前編(齋藤・服部, 2024)についてもご参照いただければ幸いです。なお、本インタビューの活字化等にあたり、東京大学経済学部の安斎由里菜さんと新田凜さんの協力を得ました。れが分かりやすい、ということであったと思います。2011年に野党であった自民党や公明党は、復興財源の明確化のため特別会計化を求めていました*1。その一方で、この資金調達をする場合、特会でなくても、理屈上は建設国債などの形で資金調達し、国土交通省などに予算をつけるという形もあったと思います。当時の政府には一般会計内での経理区分で対応可能との意見もあったところ、民主党・自民党・公明党の3党合意の結果、特別会計の新設に至りました。一方で、2020年のコロナ禍や、2024年に起きた能登半島地震については、特会を作らずに予備費で復興対策を実施しています。齋藤 どういうときに特別会計として区分し、どういうときに一般会計のまま予算を措置するかは、どれだけ収入と支出のリンクが強いかというところが一つの判断軸になると考えられます。特別会計を作る際には、収入と支出が紐づいていて、その対応関係が明確になるように分けた方が分かりやすい時に、特別会計として、一般会計から切り離します。特会として切り離すとなれば、最終的には法律面での手当てが必要となるので、法規課をはじめとした主計局と、その予算を担当している省庁で話し合って、切り分けた方がいいよねという話になってくると、政府としてその話をまとめ、国会へ持っていって、政治家の方にも納得をしていただければ、特会になるということです。私の理解では、東日本大震災のときは、復興のために国として歳出予算の規模を膨らませ、すぐに財源はないのでその分国債を発行したわけですが、そのときに復興のために発行した国債を、どのように償還をしていくのかという問題に対して、一般会計のそれまで 40 ファイナンス 2024 May齋藤通雄氏に聞く、国債を巡る資金の流れと特別会計の基礎(後編)
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