ファイナンス 2024年5月号 No.702
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(国有財産行政における対応)・重要施設(防衛関係施設や原子力関係施設等)及び国境離島等の機能を阻害する土地等の利用の防止を目的とする・重要施設の周辺土地及び国境離島等において、注視区域、特別注視区域を設ける・注視区域においては土地の利用状況を調査し、調査結果を踏まえ、施設等の機能を阻害する行為(機能阻害行為)が行われている場合には勧告・命令(罰則あり)を行う。必要がある場合には、国による土地の買取りを行う。特別注視区域においては、それらに加え、所有権移転等に際しての事前届出を義務づける。・機能阻害行為が問題であることから、それを行う主体が外国人であるか日本人であるかは問わない。本法律が令和4年9月に施行されてから、第1回の区域指定が令和4年12月、第2回が令和5年7月、第3回が12月、第4回が令和6年4月と、順次、区域の指定が進められた。これまでに、全国で583か所が指定されており、例えば、国境離島では対馬、西表島、鳥島、北硫黄島などが、重要施設では千歳基地や福岡空港、川内原子力発電所などが指定された。なお、本法律の担当省庁(内閣府)によれば、第4回の区域指定をもって、現時点で区域指定が必要なものは一通り終わるとのことである。次に国有財産行政における対応だが、まず、国境離島に関しては「最適利用に向けた未利用国有地等の管理処分方針について」において、「国境離島、森林・水源地、その他の保全の対象となる土地」に該当する財産については、・・・当分の間、売却せずに保有し、適切に保全・管理を行う」とされており、この方針の下で、各財務局において適切に管理されている。また、重要施設周辺の注視区域及び特別注視区域内にある国有財産の売却等については、安全保障と、まちづくりや地域の経済活動に与える影響の、いずれをも尊重したバランスのとれたものとする観点から、・国有地の売却や貸付けといった方針を判断するに当たっては、重要施設を所管する省庁(防衛省など)及び重要土地等調査法を所管する内閣府に意見を聞7.今後の方向性以上が国有財産行政の過去・現在・未来の概要である。当面見通せるニーズへの対応としては、上記のように、・多発する災害に備える観点から、国有地に関する情き、その意見を踏まえて管理・処分を行う。・売却や貸付けを行う際の契約に当たっては、重要土地等調査法に基づく命令が発せられた場合には、国が土地等の「買戻し」又は「貸付契約の解除」ができる特約条項を付す。という対応を行うこととしている。財務局においては、こうした方針の下、指定された注視区域及び特別注視区域内にどのような国有財産が存在するのかをリストアップした上で、関係省庁に管理・処分に関する意見照会を順次行っているところである。重要土地等調査法は施行されてまだ1年半ほどの法律であり、施行から5年後に状況を検証し必要に応じて制度の見直しを行う旨の附則も存在することから、今後の推移を見極めていく必要があるが、財務省としては、この法律の趣旨を踏まえた適切な国有地の管理・処分を行っていく方針である。報を地方公共団体と共有する・高齢化の進行によって需要が増加する介護施設の設置に関して国有地を活用する・様々な地方公共団体においてコンパクトシティの検討が進んでいることを受け、まちづくりに国有地を活用する・直ちに売却や貸付が難しい国有地であっても、適正かつ効率的な維持管理を行いながら、地域での有効活用につなげることなどが考えられ、いずれのテーマについても、地方公共団体や地域との密接な意思疎通が重要である。現時点では見通せない地域・社会のニーズに対しては、留保財産制度を積極的に活用し、新たなニーズが生じた段階で、国有地を利活用できるようにしていきたいと考えている。国有財産行政は、他の監督行政とは異なり、民間の方々と対等の立場で契約を結ぶことになるため、財務 26 ファイナンス 2024 May

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