ファイナンス 2024年5月号 No.702
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育所や介護施設の整備における国有地の活用を推進してきた。これまでに国有地を定期借地により貸し付けることによって、保育16,365人、介護10,624人の受け皿確保を実現したところであり、これからも、各時代の地域・社会のニーズを適切に把握し、柔軟に対応していきたいと考えている。地震や台風等の災害対応に当たって、国有財産を活用していただくという取組は以前から継続している。財務局は、平時から、ここに国有地がありますよ、というリストを地方公共団体と共有しており、災害が発生したときや、災害が発生する蓋然性が高いときには地方公共団体の求めに応じて無償で国有地を提供し、避難場所や廃棄物仮置き場などに活用いただけるようにしている。時々刻々と土地の利用状況等は変わるので、リストについては定期的に更新している。また、災害が発生したときには、一時的に空いている国家公務員宿舎についても被災地方公共団体に情報提供し、みなし仮設住宅として、被災者の方の一時的な避難場所として活用していただくことを可能としている。今年元日に発生した能登半島地震においては、上記対応を行い、令和6年2月末現在で、石川県内の合同宿舎105戸について石川県に無償で使用許可を行い、順次希望する被災者の方に入居いただいている。このほか、北陸財務局は、石川県庁の現地災害対策本部への連絡調整要員の派遣をはじめ、避難所の設営支援などに多くの職員を派遣しているほか、各財務局も職員を派遣し罹災証明書の発行等の支援を行っている。大災害に当たっては国を挙げて対処する、という大方針に沿って、国有財産行政を担当する部局としても、被災地・被災者のために何ができるか、という観点から引き続き取り組んでいきたい。長期的な人口減少や高齢化の進展、東京一極集中等を背景に、土地を相続したものの、土地を手放したいと考える方が増えている。確かに、意図せずして田舎の土地を相続したけれども、東京で家も買ったし、あまり田舎に帰ることもないし、管理するのは負担だ、と感じる方がおられることは、私の身近な事例としても聞いている。平成30年度土地白書によれば、土地所有を負担に感じたことがあると答えた方は約42%に上った。こうした状況の下で、土地の管理不全や、所有者不明の土地の増加という問題が顕在化している。これらの問題は、例えば、公共事業を行う際に所有者の探索に多大の時間と費用がかかるとか、雑草が伸び放題となって隣接する土地に悪影響が及ぶなどの問題を引き起こしている。所有者が不明である土地の面積は九州よりも広いと言われており、今後高齢化の進展による相続機会の増加等により、こうした問題はますます深刻化すると見込まれている。このため政府は「所有者不明土地等対策の推進に関する基本方針」(平成30年6月)を策定し、土地所有者の責務の明確化など土地所有に関する基本制度の見直し、登記制度・土地所有権の在り方等に関する検討、所有者不明土地の円滑な利活用、土地所有者情報を円滑に把握する仕組みといった所有者不明土地問題への包括的な対応方針を示し、政府一体となって総合的な対策を推進している。このうち不動産登記制度の見直しについて見ると、相続登記や住所等の変更登記はこれまで任意だったので、相続した土地の売却が難しいような場合には、費用等をかけてまで登記の申請をしないといったことも起こっており、所有者が不明の土地が全国各地に生まれてきた。このため登記を義務化することとし、相続登記の申請は令和6年4月から、住所等の変更登記の申請は令和8年4月から施行されることとなった。引き取り手のない土地の問題は国有財産行政に大きく関係する。民法第959条では、相続人が不存在の場合、民法の所定の手続を経てもなお残余財産があれば国庫に帰属する、と定められており、最終的に土地の引き取り手が出てこなければ国有財産となるからだ。相続人不存在による国庫帰属件数は年間100件を超えて推移しており、増加傾向にある。中には、老朽家屋の解体が行われなかったことから、そのままの状態で国有財産となったため、近隣住民の不安を解消すべく、財務局が解体撤去工事を行った事例もある。(1)災害対応(2)相続土地国庫帰属制度6.最近のトピックス 24 ファイナンス 2024 May

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