ファイナンス 2024年5月号 No.702
27/88

ファイナンス 2024 May 23シェアサイクルとしての活用事例(東京の湯島地方合同庁舎) (関東財務局提供)国有財産行政の過去・現在・未来用許可は「活用可能な財産の情報を積極的に発信し、地域社会による更なる活用を促すことで、一層の有効活用を図り、更なる収益確保」を目指すための政策ツールとして新たに定義された。これを受けて、多様な政策課題の解決に貢献するような使用許可用途の発掘に取り組んでいる。これまで、脱炭素社会の実現、DX・働き方改革推進等を進めるため、シェアサイクル、カーシェアリング、電気自動車用充電器、5G基地局、BOX型サテライトオフィス等の使用許可を行っており、導入件数も増加しつつある。さらに、地域活性化への貢献を目指してつくば市にある研究者向けの研究交流施設の会議室をスタートアップ向けオフィスに改装し、実際に3事業者の入居に至った例もある。使用許可に関する募集や許可といった各種事務手続きは各省庁が行うものであるので、理財局・財務局は、行政財産のうち活用できそうなスペースを調査したり、事業者が活用できるスペースについて知ることができるようHP上で資料を公表したり、関心を持った事業者と各省庁をつないだりといった取組を行っている。https://lfb.mof.go.jp/kantou/kanzai/katsu2/pagekt_cnt_20240404001.html次に普通財産のうち、未利用の国有地についてである。国が使う予定がなく、特に用途が決まっていない国有地については、地方公共団体や個人等に対して売却や貸付けをすることによって、土地の最適利用を通じてまちづくりに貢献するとともに、国の財政健全化にも資することを目指している。未利用国有地のストックの推移をみると、既述のとおり、ピーク時の平成11年度末には1.8兆円だったものが、積極的に国有地の売却を進めてきた結果、令和4年度末には0.5兆円となっている。さらに、未利用国有地といっても、その内訳を見ると、境界が不明確などの理由ですぐには売却できない土地が1,172億円、地方公共団体等が利用を検討している土地が3,835億円あり、すぐに売却できる土地(一般競争入札を予定している土地)は275億円に過ぎない。これまでの売却促進の結果、国有地のストックが極めて少なくなってきたとともに、都市部にあるまとまった土地は、一度売却してしまうと再び入手することは困難であり、将来、まちづくりのためにまとまった土地が必要となった場合に対応できないこととなる。こうした観点を踏まえ、令和元年答申にあるように、有用性が高く希少な国有地については、売却するのではなく「留保財産」として国が所有権を留保し、地域・社会のニーズを踏まえながら、定期借地権を活用した貸付けを行うこととしている。すなわち、まとまった国有地を、今の地域・社会のニーズに応じて活用していくとともに、所有権を国が留保し続けることで、将来の多様化する地域・社会のニーズにも対応が可能なようにしていく、ということである。現在、全国で63(令和5年末時点)の留保財産を選定し、地方公共団体との議論等を踏まえて、定期借地権による貸付けを前提とした最適利用を図るための利用方針の策定を順次進めており、特別養護老人ホームや学校施設などでの活用が見込まれている。都市部にある「有用性が高く希少な国有地」については、まちづくり等の観点から、地方公共団体の考えが重要であり、財務局は地方公共団体と十分なコミュニケーションを図りながら、どのような利用の仕方が最も望ましいか、について、日々検討を深めている。国有財産行政では、こうした留保財産に関する取組に加えて、人口減少や少子高齢化といった現代社会が抱える課題に積極的に対応してきており、例えば、保(1)未利用国有地の現状5.未利用国有地(2)留保財産制度について

元のページ  ../index.html#27

このブックを見る