ファイナンス 2024年5月号 No.702
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は取り外してもらいます。」私「その穴の横に木の板が打ち付けてありますが・・・、これは?」管理人「ここに給湯器を付けてください。ホームセンターで売ってます。」私「えっっ、それまでお湯は?」管理人「使えません(キッパリ)。」私「お風呂はどう使うのでしょう?」管理人「ここのハンドルを回して着火してお湯を沸かしてください。床はコンクリートがむき出しなので、簀の子でも置いてください。ホームセンターで売ってます。」※正式には「バランス釜」と呼ばれる、湯沸し装置が横に付いているお風呂。私「お風呂場の中にある洗面台で顔を洗うと、足に排水がかかるのですが。」※想像しにくいでしょうが、洗面台から下に伸びているパイプが途中で途切れていて、排水はバシャバシャとお風呂場の床に垂れ流される構造でした。管理人「簀の子を置けば大丈夫です。」私「お風呂場に換気扇が付いてないような。。。」管理人「ありません。ですので、お風呂場の窓を開けてしっかり換気してください。そうでないと黒カビが生えます。通気のために居間の窓も開けることをお勧めします。」私「確かに、すでに黒カビが生えてますね。というか、お風呂上りに居間の窓を開けるって、冬でも?」管理人「冬でも(キッパリ)。」そのほか、きちんと閉まらない襖、テニスボールを置くと転がっていく傾いた畳、体育座りをしないと入れない狭いお風呂、洗濯機置き場が存在しない、など、衝撃的なことはたくさんあった。この宿舎は、今では取り壊されて存在しない。最近建てられた宿舎は、さすがに換気扇や給湯器は最初から付いているが、上記のような宿舎も、減少しつつあるとはいえ未だ存在している。「公務員宿舎に入居する必要があるのだろうか?」と思われる方もいるかもしれない。もちろん公務員宿舎に入ることは、一部職員を除いて義務ではない。公務員宿舎は、国家公務員宿舎法第1条に規定されているとおり、「職務の能率的な遂行を確保し、もって国等の事務及び事業の円滑な運営に資することを目的」としており、入居できるのは以下の類型に該当する者だけである。ⅰ)離島、山間へき地に勤務する職員。自然保護官事務所やダム管理事務所職員等、離島や山間へき地に勤務する職員は、職場まで通える場所に自宅を所有していないことがほとんどである。ⅱ)頻度高く転居を伴う転勤等をしなくてはならない職員。国は公平で均一な行政サービスを全国で提供する必要があり、国家公務員の勤務地は、全国に広く点在している。こうしたことに加え、不正や癒着の防止、適材適所の人材配置といった観点のほか、職務に熟達した能力の高い職員の育成のため、国家公務員は一定の地域に限定されることなく勤務しなければならない。ⅲ)居住場所が官署の近接地に制限されている職員。国家公務員の中には、その職務の要請から、居住場所を官署の近接地に制限されている職員がいる。例えば、危機管理要員、刑務官、一部の自衛官等は、テロ、災害、暴動等の発生時に迅速に官署に駆けつけ、適切に対処することが求められている。令和6年元日に発生した能登半島地震では、直ちに出勤した職員も多かったと思われる。ⅳ)各省庁が定めるBCP(業務継続計画)等に基づき緊急参集する必要がある職員。国は、災害、テロ、経済危機、武力攻撃等の事件・事故等の発生に対しても、迅速かつ適切に対処し、国民生活及び経済活動等に支障が生じないよう業務を継続していくことが要請されており、緊急参集要員は、仮に交通インフラや通信手段が遮断された場合であっても、迅速に登庁することが求められている。ⅴ)国会対応等のために、深夜・早朝における勤務をしなければならない本府省職員。中央省庁における業務は、国会質問への対応など国会の様々な活動と密接に関係するものが多い。本省勤務をされた方であれば、予算審議中や自ら担当する法案審議中には帰宅できなかった経験のある方も多いだろう。 20 ファイナンス 2024 May

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