ファイナンス 2024 May 19国有財産行政の過去・現在・未来*6) 庁舎等の一棟の建物を国と国以外の者が区分して所有するための建築刻な低迷や「小さくて効率的な政府」への志向を受け、国有財産行政は次のとおり大きな転機に直面していた。・経済活性化のために、国有財産を有効活用するべき・極めて厳しい財政事情を踏まえると、市場性に劣る財産であっても売却・有効活用していくべきこのような状況の下、効率性を一層重視した国有財産行政へと転換するため、制度面・運用面の両面から幅広い見直しを行った(平成18年1月財政制度等審議会答申「今後の国有財産の制度及び管理処分のあり方について-効率性重視に向けた改革-」)。この答申に盛り込まれた改革のうち、法律改正を必要とする事項について、国有財産法等を改正したが、これは約40年ぶりの大きな改正であった。その主な内容は以下の通り。・市場性に劣る不整形地なども売りやすくするため、隣接地との交換を可能とする(国有財産特別措置法)。・行政財産は国が直接使用するものであることから貸付け等は原則禁止されているが、行政目的を効果的に達成することに資するものを新たに貸付対象に追加(国有財産法)。例えば、行政財産である空港用地に、民間所有の空港ビルなどの堅固な工作物を設置する場合など。・国以外の者とのいわゆる合築*6について、地方公共団体等に限定されていたが、国有地隣接の民有地を活用した合築を可能とする(国有財産法)。未利用国有地のストックが大幅に減少してきたほか、人口減少・少子高齢化に伴い、地域・社会のニーズの多様化や所有者不明の土地や空き家問題を含めた引き取り手のない不動産に関する問題が新たな課題として顕在化してきた。こうした状況の変化を踏まえ、国有財産を「最適利用」していくための見直しを行った(令和元年答申「今後の国有財産の管理処分のあり方について-国有財産の最適利用に向けて-」)。【具体的見直しの例】・有用性が高く希少な国有地については将来世代におけ3.国家公務員宿舎国有財産は、国有財産法第3条第1項に基づき、大きく2つに分けることができる。すなわち、行政財産と普通財産である。る行政需要に備え、国が所有権を留保しつつ、定期借地権による貸付により活用を図る(留保財産制度)。・中央官衙地区及びその周辺という庁舎が不足する地域において、一定規模の権利床の取得が見込まれる場合には、庁舎需要や経済合理性等を勘案の上、庁舎として活用を図る。・宿舎については、地域によっては不足し、また、全体的に老朽化が進んでいることを踏まえ、宿舎が不足する地域においては、借受や建設により宿舎を確保し、また、計画的かつ効率的な改修を進めていく。現在は、この令和元年答申の方針に沿って、具体的な国有財産の管理・処分を実施に移しているフェーズにあり、その具体的内容について以下に記していきたい。行政財産とは、イメージとしては、国の役所が使用中の財産であり、庁舎とか公務員宿舎がこれに該当する。一方、普通財産とは、未利用の国有地などのことである。以下、まずは行政財産のうち公務員宿舎から見ていきたい。あれは私が、とある公務員宿舎に入居したときのことだった。そのときの管理人さんとの会話は、20年以上経った今でも鮮明に覚えている。管理人「ここが入居する部屋です。」私「4階だけど、エレベーターはないんですね。」管理人「公務員宿舎ですから。」私「えっと、、台所の壁に丸い穴が開いていて、外が見えるのですが・・・、これは?」管理人「ここに換気扇を付けてください。ホームセンターで売ってます。」私「えっ、換気扇は自分で付けるんですか?」管理人「(当然だろ、という顔で)はい。退去のとき(5)令和元年答申(1)公務員宿舎の制度と現状
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