ファイナンス 2024年5月号 No.702
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ファイナンス 2024 May 17国有財産行政の過去・現在・未来*3) 大蔵省に臨時国有財産整理部が設けられたほか、各税務監督局長が地方機関として国有財産の総括と雑種財産の管理の事務を担うこととされた。*4) 現行国有財産法の普通財産に相当する。売却価格も財務局ホームページに掲載されている。また、国有財産を最も効率的に運用するなどの観点から、国有財産法第7条において、財務大臣に国有財産の総括権が認められている。「国有財産の総括」とは「国有財産の適正な方法による管理及び処分を行うため、国有財産に関する制度を整え、その管理及び処分の事務を統一し、その増減、現在額及び現状を明らかにし、並びにその管理及び処分について必要な調整をすることをいう。」(国有財産法第4条)。具体的には、法令の適切な解釈等を行うとともに、各省庁から新たな庁舎を建てる要望があったときにはその必要性を審査し、どこの役所がどこの庁舎に入るか、という調整をしたり、各省庁が実際に国有財産を効率的に使用しているか、について実地監査をしている。また、国有財産が年間でどれだけ増減し年度末の現在額がいくらであったかということを毎年国会に報告するとともに、どういう国有財産がどこに所在しているのか公表している。これらの事務の一部は、国有財産法第9条第1項及び第2項により、財務大臣から財務局長に委任されており、実際に国有財産を売ったり、貸したりする場合には、財務局長の名において行うこととなる。国有財産総括事務処理規則(昭和29年大蔵省訓令5)では、「財務局長等は、管轄区域内にある各省各庁の所管に属する国有財産について、常にその状況に留意し、各省各庁の部局等の長に対して、良好な状態での維持及び保存、用途又は目的に応じた効率的な運用その他の適正な方法による管理及び処分を行わせるとともに、国民経済及び国家施策の総合的見地において、公平適正な処理を図るように、国有財産の総括をしなければならない。」と定められている。こうした規定を常に念頭に置きつつ、財務局管財部門の職員は全国津々浦々で国有財産の管理・処分に日々従事している。財務局は、北から、北海道財務局、東北財務局、関東財務局、北陸財務局、東海財務局、近畿財務局、中国財務局、四国財務局、福岡財務支局、九州財務局が存在する。なお、沖縄県については、内閣府の沖縄総合事務局において管財業務を行っている。2.国有財産行政の変遷「国有財産」という概念は、地租改正の過程において誕生したものである。明治維新以前は土地所有権が法制度上定められておらず、従って土地の国有・民有の区別も存在し得なかった。地租改正の実施に当たり土地種目の区別、名称の統一が必要となったため、明治6年3月から、民有財産と国有財産の別が明確にされた。その後、大正10年に旧国有財産法が制定され、国有財産の管理は各省大臣が、その全体調整は大蔵大臣が行うこととされた。その際、初めて大蔵省に国有財産の事務処理のための部局*3が新設された。また、国有財産について利用目的ごとに(1)公共用財産、(2)公用財産、(3)営林財産、(4)雑種財産*4の分類がなされ、国有財産制度の原型をここに見ることができる。余談だが、先日、地元の図書館のホームページで新着案内を見ていて、「るるぶ もふ旅」とあったので、速攻で予約した。遂にるるぶも財務局巡りのガイドブックを出すようになったか、ニッチなところを狙ったな、と感慨深かったが、実際に借りてみると、「自然の中でのびのび暮らす動物に出会える離島&観光地をご紹介」ということだった。それはそうだよな、と、そっとページを閉じた。その後の現在までの国有財産行政を見ると、国有財産の管理・処分の大きな方針の転換点として、(1)戦後処理に係る国有財産の増加、(2)高度経済成長と石油危機、(3)バブルの発生、(4)平成18年財政制度等審議会答申、(5)令和元年財政制度等審議会答申(以下、「令和元年答申」という。)が挙げられる。なお、このように、国有財産行政の方針に関する検討に当たっては、随時、財政制度等審議会国有財産分科会で御議論いただいており、そこで出される答申において、国有財産行政の大きな方向性を示していただいている。第2次世界大戦中、国有財産行政については、その担当は1係4名のみとなり、昭和19年度の国有財産(1)戦後処理に係る国有財産の増加

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