ファイナンス 2024年5月号 No.702
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■ トランジション■ サステナビリティ・リンク■ サステナビリティ■ ソーシャル■ グリーン2,0402,0401,5891,5895,4585,4582,0982,09820242023(注1) いずれも暦年(1~12月)であり、2024年は4月末まで。(注2) 数値は全て発行時の為替レートで米ドル換算した金額。(出所)Bloombergのデータを基に財務省にて作成。2,6142,6142,4192,4191,9701,9701,5421,5421,7191,7197,0227,0225,4695,4692,6872,6872,9222,922201920202021202250501,5861,58632321591591,8831,88377898998698621521540401,3691,3693232787787111111172172859859685685(億ドル)14,00012,00010,0008,0006,0004,0002,0000理財局国債企画課課長補佐 瀧野 聡/理財局国債企画課国債政策情報室調査係 立川 彩夏、小山 真未、鈴木 悠二図表世界のESG債の発行額の推移6) 地球温暖化等の環境的問題の解決に資する事業(グリーンプロジェ7) 衛生・福祉・教育などの社会的課題の解決に資する事業(ソーシャ8) 環境的課題及び社会的課題の双方に取り組む事業に要する資金を調9) 発行体が事前に定義したサステナビリティ・ESG目標を達成しているか否かに応じて、債券の財務的・構造的特性が変化し得る債券。クト)に要する資金の調達のために発行される債券。ルプロジェクト)に要する資金の調達のために発行される債券。達するために発行される債券。GX投資を支援する仕組みを創設GX経済移行債特集ESG債とは、環境課題(地球温暖化等)、社会課題(教育・福祉等)等の解決に資する事業の資金を調達するために発行される債券であり、主に「グリーンボンド6 」「ソーシャルボンド7 」「サステナビリティボンド8 」 「サステナビリティ・リンク・ボンド9 」「トランジション・ボンド」に大別される。ICMAが2014年に「グリーンボンド原則」、2017年に「ソーシャルボンド原則」を公表したことなどを契機として、近年ESG債の発行は高水準で推移している(図表)。脱炭素社会の実現のためには、再エネ等の既に脱炭素の水準(グリーン)にある事業への取組に加えて、温室効果ガス多排出産業を中心に省エネ・燃料転換等を含む着実な脱炭素化に向けた移行(トランジション)への取組に対するファイナンスも重要である。脱炭素社会の実現に向けて長期的な戦略に則った温室効果ガス削減の取組等へのファイナンス資金の調達を企図した債券である「トランジション・ボンド」についても、発行額は増加傾向にある(図表)。2024年4月末までの累計で、発行額では、全世界合計約272億ドルのうち、日本が約161億ドル(約59%)、日本を除くアジアが約40億ドル(約15%)であり、日本を中心としたアジアのシェアが非常に大きくなっている。なお発行件数の観点でも、これまで発行された81銘柄のうち、日本が50銘柄(約62%)、 アジア(日本除く)が18銘柄(約22%)と、発行額同様に日本・アジアのシェアが際立って大きい。日本初のトランジション・ボンドは2021年7月に日本郵船株式会社(業種:海運)が発行した社債であり、温室効果ガス排出削減に向けたLNG燃料船に係る支出(設備投資、研究開発資金等)などを資金使途としている。その後も日本航空株式会社(業種:航空)や株式会社JERA(業種:発電)、株式会社IHI(業種:重工業)、JFEホールディングス株式会社(業種:鉄鋼)など様々な業種の企業での発行が相次いでいる。日本ではトランジション・ファイナンスの普及を目指して、ICMAの「クライメート・トランジション・ファイナンス・ハンドブック」と整合的な形で、2021年5月に金融庁・経済産業省・環境省が「クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針」を策定した。また、ASEANは、2023年3月に「トランジション」の要素と考えられる石炭火力発電の段階的廃止なども盛り込んだ初の地域タクソノミー(分類基準)「ASEANタクソノミー第2版」を公表し、シンガポールも2023年12月に「トランジション」の定義を定めた世界初のタクソノミーである「シンガポール・アジアタクソノミー」を公表するなど、トランジション・ファイナンスに関する動きが活発である。我が国が、国による世界初のトランジション・ボンドを発行したことも契機として、今後も日本を含めアジアを中心にトランジション・ファイナンスが拡大していくことが期待される。 14 ファイナンス 2024 May特集特集

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