ファイナンス 2024年5月号 No.702
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石石川川投資促進策の4つの基本原則を紹介したいと思います。まず、(Ⅰ)政府による支援ですから、民間企業のみでは投資判断が真に困難な事業を対象とします。次に(Ⅱ)GXの根幹である排出削減と経済成長、いずれにも貢献するもので、その中でも特に市場規模や削減規模の大きさなどの面で優先順位の高いものから支援します。そして、(Ⅲ)その企業の投資や需要側の行動を変えていく仕組みにもつながる規制、制度面の措置と一体的に講じます。さらに、(Ⅳ)日本国内の人的・物的投資拡大につながるものを対象とします。根根本本排出削減ではエネルギー転換部門も重要ですが、日本の排出量の内訳を見ると、それ以外にも、鉄鋼や化学、紙パルプ、セメントなどいわゆる多排出セクターに代表されるような産業部門や運輸部門、あるいは家庭部門など、くらし関連部門も総合的に支援していくことが重要です。結果、多分野に及びますから、すでに技術が確立されている分野もあれば、多排出セクターのようにまだまだ技術開発途上のものもあり、状況が異なります。石石川川ですので、合計22の分野において、どのような技術が重要であるかを見極め、技術の実装に向けた投資、日本政府による支援策によって期待される排出削減の効果を分野別投資戦略にまとめることで、実際に各業種、各分野でどのようにカーボンニュートラルの実現に向けて進んでいくのか、それに対する政府の支援はどういうものなのかを見える化しています。それぞれの分野で決まっていたものを、より具体的なアクションに落とし込んでいるわけです。朝朝倉倉民間企業だけではコストに見合う見込みの少ない投資はなかなかできません。政府がリードして支援をすることで、民間企業が早めに投資できる環境を作っていくのが狙いということですね。矢矢野野CT債の初回発行に先立ち、令和6年1月後半から2月初めにかけて、経済産業省、サポーター、評価機関と協力して欧米の投資家向けに集中的にIRを行いました。非常に技術的な質問も多かったですが、IR参加者それぞれの知見や専門性を生かし、的確に投資家の問題意識に応えることができたのではと思っております。IRをしてみての経済産業省としての所感があれば教えてください。石石川川世界初の国によるトランジション・ボンドということで、どんな反応があるか、当初は心配していました。実際には欧米ともに、GX戦略の考え方、そしてCT債の充当予定事業について、日本の気候条件や地理的制約、あるいは産業構造などの特性を踏まえた、脱炭素化に向けた現実的なアプローチとのことで高い関心と期待が寄せられたと思っています。発行の準備という意味では、およそ1年前から国内外の投資家と面談を始めていましたが、最初に話をした時よりも、日本の取り組みに対しての見方が変わってきていることを強く感じています。根根本本アジアにおけるトランジションへの貢献について、関心を示している投資家もいました。実際、トランジション・ファイナンスは、日本にとどまらず、アジア含め世界で大きなポテンシャルがあると思っています。特に、アジアは世界の排出量の半分以上を占めている上、日本と同様に欧米と比べて再エネのポテンシャルに限りがあります。加えて、人口がこれからどんどん増えて経済成長も見込まれます。その中で電力需要が増えていく課題に直面しています。そのため、日本のGX、それに基づくCT債を1つのモデルとして、トランジション・ファイナンスをアジアでも活性化させていきたいと思っています。朝朝倉倉CT債の重要な要素として、各事業のCO2削減効果等に関するレポーティングがあり、投資家の関心も高いですね。投資家と面談を行うと、レポーティングの内容やスケジュールについてのコメント・質問がしばしば見られます。 12 ファイナンス 2024 May

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