財務総合政策研究所 総務研究部長 上田 淳二客員研究員 細江 塔陽財務総合政策研究所 総務課長 川本 敦総括主任研究官 鶴岡 将司楡井 誠 東京大学大学院経済学研究科教授/財務総合政策研究所特別研究官上田 淳二 財務総合政策研究所総務研究部長細江 塔陽 財務総合政策研究所総務研究部(客員研究員)*1) 本稿の内容は全て筆者の個人的見解であり、財務省および財務総合政策研究所の公式見解を示すものではありません。平成14(2002)年にシカゴ大学で博士号(経済学)を取得。サンタフェ研究所ポストドクトラルフェロー、一橋大学准教授、財務省財務総合政策研究所総括主任研究官、東京大学准教授などを経て平成31(2019)年現職。専門はマクロ経済学。京都大学経済学博士。平成6(1994)年東京大学経済学部卒、大蔵省入省。財務省主税局調査課税制調査室長、京都大学経済研究所准教授、IMF財政局審議役などを経て、令和2(2020)年から現職。令和3(2021)年東京大学経済学部卒、財務省入省。財務省大臣官房総合政策課、財務総合政策研究所計量分析室、熊本国税局を経て令和6(2024)年から財務総合政策研究所所属。楡井 誠 特別研究官インタビュー財務総合政策研究所(以下、「財務総研」)では、大学等に所属している研究者の方々に、「特別研究官」として、専門的な調査研究に参画していただいています。今月は、マクロ経済学を専門にご研究をされておられる特別研究官の楡井誠教授(東京大学大学院経済学研究科)に、ご研究活動やその背景及び政策を考える上での経済学の役割についてインタビューを行いました。その中で、昨年11月に上梓された近著『マクロ経済動学—景気循環の起源の解明』(有斐閣)について、執筆の動機や問題意識を伺いましたので、ご紹介します。*1 76 ファイナンス 2024 Apr.30楡井 誠 特別研究官インタビュー・ 「日本経済と資金循環の構造変化に関する研究会」を開催しています1 これまでのご研究上田総務研究部長:本日はよろしくお願いします。まずはこれまでのご研究の動機についてお伺いしたいと思います。様々な分野でのご研究をされている楡井教授ですが、楡井教授にとって経済学という領域に入っていく一番の動機とは何だったのでしょうか。物事を科学的に解き明かしていく事実解明的な側面に魅力を感じられたのか、あるいは、政策的に何を改善していくべきか、ということに対する規範的な示唆を経済学という学問から導けるかもしれないという期待と、どちらが強いのでしょうか。楡井教授:両方あると思いますが、どちらが強いかと言われると、後者になると思います。ケインズやマルクスといった社会体制論に関わる部分で、経済はどうあるべきか、社会は経済というものとどう付き合っていくべきか、という広い意味での経済学の政策インプリケーションに強い関心がありました。しかし、私が学生の頃には、そういった議論は抽象的に戦わせるものではなく、実際の経済を見て、どちらがうまくいっているのか、どういったタイプの経済統制を行うとどのようなことが起こるのか、といった具体的な命題が実証的に議論されているような状況でした。例えば、青木昌彦先生に代表される日本型の資本主義とアメリカ型の資本主義を対比させるような比較制度分析は非常に盛んでしたし、日本は90年代のちょうど端境期にあって、より望ましい経済体制のあ
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