ファイナンス 2024年4月号 No.701
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コラム 海外経済の潮流 150ファイナンス 2024 Apr. 69(出所)ピーターソン国際経済研究所(PIIE)【図表2】米国の平均関税率の推移(%)【図表3】米国の関税収入の推移(億ドル)100806040200→トランプ政権2520151050147101471014710147101471020182019→トランプ政権159201815920171592019*4) CHIPSはCreating Helpful Incentives to Produce Semiconductorsの略称*5) 資金援助への申請者に関し、懸念国※での半導体製造能力の拡張を伴う重要な取引(工場建設含む)を10年間行わないことを商務省と合意する必要(ガードレール条項)。※北朝鮮、中国、ロシア、イラン。また、商務長官が関係閣僚と協議の上、米国の安全保障または外交政策に有害となる活動に関与していると判断した国。 *6) SIA「The CHIPS Act Has Already Sparked $300 Billion in Private Investments for U.S. Semiconductor Production(2022年12月14日)」*7) WHITE HOUSEが公表。*8) 国や地域間の経済や市場が切り離され、連動していない状態を指す。→バイデン政権米国_対中国関税率米国_対中国以外関税率202020212022→バイデン政権1592022(注)連邦政府の毎月の財政収支から関税収入を取得。季節調整済。(出所)米財務省15920211592020142023(注)Chad P. Bown, 2021, The US-China Trade War and Phase OneAgreementで入手可能なオリジナルデータからPIIEが更新したデータを基に作成。平均関税率は個別品目の関税率を貿易量で加重平均して算出されている。161592023(出所)FRBコンピューター・電子機器半導体その他電子機器20181917「CHIPS及び科学法」成立2022年8月2022年10月IFR発表(輸出規制)222123バイデン政権下においては、特に中国を念頭においた重要分野のサプライチェーン強化を推進しており、2022年にはCHIPS*4プラス法が成立した。主な内容としては、米国の半導体研究、開発、製造及び人材育成への約527億ドルの資金援助、半導体及び関連機器の製造に係る設備投資への25%の投資税額控除*5等となっている。半導体産業協会(SIA)によると、CHIPSプラス法成立に係り既に約3,000億ドル以上の民間投資が発表されており、米国内で4万5,000人の新規雇用を創出するとしている*6。2023年12月には、BAEシステムズの半導体製造に約3,500万ドル、2024年1月にはマイクロチップ・テクノロジーの半導体製造に約1億6,200万ドル、2024年2月にはグローバルファウンドリーズの半導体製造へ約15億ドルの助成を発表した。半導体の国内生産については、【図表4】に示すとおり、CHIPSプラス法成立以降、増加がみられる。今後、新たに建設された工場において稼働が行われればさらに増加する可能性がある。【図表4】国内半導体の鉱工業生産指数(季調済 2017=100)140130120110100908070またバイデン政権下においては、半導体以外の重要分野についても、サプライチェーン強化に向けた報告書を公表している。2021年6月には半導体を含む大容量バッテリー、重要鉱物・資源、医薬品の4分野について、2022年2月には、既存の4分野に加え、公衆衛生、情報通信技術等を含む6分野についての報告書を公表した*7。その狙いは分野により様々であるが、「重要技術の保護」と「製造業の国内回帰」が主な目的だと思われる。中国を意識した輸出入の規制強化や製造業の国内回帰の試みを背景に、米中のデカップリング*8が懸念されるも、米中の貿易総額は、2022年に過去最高額を更新した。しかしながら、【図表5】に示すとおり、2023年に入って米国の対中輸入額は減少、メキシコに次いで2位となった。品目別に確認すると、まずHSコード上2桁ごとでは、【図表6】のとおり最も減少した品目は、機械類(246億ドル:減少額に占める割合は22.6%)、次いで電子機器類(173億ドル:15.8%)であった。全99品目のうち、輸入額が増加した品目は11品目のみで、残り88品目において輸入額が減少しており、幅広い品目での減少となっている。4.バイデン政権時のCHIPSプラス法5.米国の輸入相手国の推移

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