ファイナンス 2024年4月号 No.701
71/102

 ・社員の自己判断で利用しない環境の整備 ・全社員の禁止、一部社員のみ可能などで対応 ・入力してはいけない情報を明確化、技術的に送信を禁止、入力データをチェックす企業のリスク社会的懸念コラム 経済トレンド 118ファイナンス 2024 Apr. 67(出所)日経ビジネス「【ChatGPTの衝撃】ChatGPT、広がる社員の不正利用 内規に反した銀行員23人」、PwC「生成AIを巡る米欧中の規制動向最前線 欧州「AI規則案」の解説」、三菱総合研究所「生成AIをめぐる世界の議論と日本の役割」、みずほ銀行「生成AIの動向と産業影響【総合編】」(出所)Bloomberg、大和総研「なぜ米国の金融機関の企業価値は高いのか~金融機関の企業価値経営再考~」、COPILOT該当サービスへの会社からのアクセスを制限入力するデータに問題がないかを確認る仕組みづくりなど(円/株)14,00012,00010,0008,0006,0004,0002,000020032005200820112013201620192021三井住友フィナンシャルグループ三菱UFJフィナンシャル・グループみずほフィナンシャルグループ(注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。・一部の国内金融機関では既に生成AIを業務に組み込んでいるが、生成AI利用の懸念事項として文書の無断利用や情報漏洩が挙げられる。実際に国内金融機関与信審査やデューデリジェンス(資産査定)において、社内ルールに反したChatGPTの利用が問題となった。生成AIの活用に当たりガバナンスをどう引き締めるかが課題である(図表7)。・生成AIは今後さらに多くの範囲で活用が期待される革新的な技術である一方、誤情報の生成を始めとする企業のリスクや雇用への影響といった社会的懸念も高まっている(図表8)。・2023年6月、EUで世界初となるAI規制案が採択された。AIから人間の自由は守られるべきという基本思想に基づき、リスクレベルに応じて禁止事項や要求事項、義務を定める罰則規定の合意がなされている。欧米を中心に各国でAI規制が進展しており、我が国においてもAI規制の制定が進むことが予想される(図表9)。(図表7)ChatGPTを社員が利用する際に企業が留意すべき3ヵ条利用に関するポリシーを明確にし、社内に通知(図表8)企業活動に際しての主なリスクと社会全体への懸念(1)誤情報の生成(2)著作権の侵害(3)セキュリティ・犯罪への悪用機微情報や個人情報が漏洩するリスク、悪用するリスク(4)人権・倫理問題・2022年12月に日銀がYCCの運用の変更を行って以降、国内金利の上昇で銀行の利ざや改善や国債運用による収益拡大の見込みにより国内銀行株は増価基調にあり、リーマンショック以来の水準にある(図表10)。・2023年3月に東京証券取引所がPBR(株価純資産倍率)の低迷する上場企業に対し改善の働きかけを行っており、資本規制や業務の制約を受ける国内金融機関は低い傾向にあるが、PBRは1倍の水準に近づいている。しかし、日欧米の主要大手行と比較した場合でも、国内金融機関はPBRとROE(自己資本利益率)が相対的に低い傾向にある(図表11)。・PBRとROEの向上を目指す金融機関の多くは、自社株買い等の株主還元による資本水準のコントロールにより、PBRとROEの改善に取り組んでいる。一方、中長期的には、生成AIを含むデジタル化などの成長投資にも資金を投入することで、事務部門の改善や人員配置の最適化による収益機会の拡大が重要になってくるであろう(図表12)。国内金融機関もPBR改善に向けた取り組みの2年目であり、生成AIを使いどのように経営していくのかに引き続き着目したい。(図表10)銀行業の株価推移(5)雇用への影響(6)情報操作(7)教育への影響(8)AIの暴走(人類への脅威)誤った情報による信用喪失や損害などのリスク学習データの不適切な利用、生成コンテンツの著作権侵害リスク(類似性・依拠性)不適切な回答や広告文を生成してしまうリスク非定型業務も含む広範なタスクを自動化、雇用代替が進む懸念フェイクニュースが、選挙や民主主義に悪影響を与える懸念学習意欲・思考力の低下、試験での不正利用の懸念目標達成に必要な下位目標を自ら設定し、人が制御できなくなる懸念PBR(倍)21.81.61.41.210.80.60.40.20モルガンスタンレー(米)バンクオブアメリカ(米)ゴールドマンサックスウェルスファーゴ(米)(米)大和SMFGMUFG野村みずほFGシティバンクドイツ銀行(独)(米)1005 米国官民の対話を通してリスク対策やルール化が進められるとともに、国立AI研究機関の立ち上げに向けた資金提供など積極投資欧州消費者保護やデジタル産業競争力確保の観点から、やや規制論調が強い。一方で英国はAI研究開発への投資や賞金授与を行うなど産業保護・育成に向けた動きも国家安全保障のための規制を目的として生成AI規制を導入、外国製の生成AI利用を実質排除BATなどの中国プラットフォーマーは生成AIモデル構築・提供に積極的中国インド政府主導でインド独自の生成AIを開発するなど積極投資AIを規制しない方針を明言15(注)PBRは2024/2/27時点。ROEは2023年末時点。20ROE(%)JPモルガン(米)HSBC(英)(図表9)生成AIに対する主要各国のスタンス国・地域(図表12)生成AIにて作成した「生成AIと金融機関の発展」のイメージ図スタンスバランス慎重自国優先積極的(図表11)日米欧の主要大手上場金融機関の企業価値評価生成AI活用に向けた課題展望

元のページ  ../index.html#71

このブックを見る