ファイナンス 2024年4月号 No.701
60/102

対しては、RILO等の国際機関を通じた情報交換が効果的な手段となる。RILOを通じた情報交換は、WCOが提供するCEN(Customs Enforcement Network)というデータベース/コミュニケーションツールを使って行われることが多いが、RILOは担当地域における同ツールの管理も担当しているため、情報のハブとしてRILOには多くの情報が集積されることになる。そして、こうした情報を活用し、地域のメンバーに共有することにより、二国間でのやり取りを含めて域内の情報交換を促進することも可能となる。また、各RILOはそれぞれの地域内の情報交換に係るコンタクトポイントを把握することで、相互にコンタクトポイントを把握出来ていない国・地域間の情報交換を仲介するという役割も担っており、このこともRILOに情報が集積される要因となっている。この他、RILOでは、地域又は全世界的な水際取締上の課題を踏まえ、特定の密輸品を対象とした共同取締オペレーションを、時には税関以外の国際機関とも共同して企画・運営することで、オペレーション参加メンバー間の情報交換を活性化させ、WCOメンバーが効果的・効率的な密輸取締を実践するための支援を行っている。RILOは、これらの活動を通じて、各国・地域の税関当局、他の国際機関等から寄せられた情報を分析・評価した結果を税関当局に発信し、各国・地域の税関当局は、RILOから発信される様々な情報を参考に取締りを行い、RILOは取締結果のフィードバックを受けることでより深度、確度のある分析を行う、という正の情報サイクルが発生することが期待されている。RILOは、ホスト国税関からは完全に独立した機関であるが、以上で述べたような役割を十分に果たしていくためには、ホスト国税関からの支援及び協力が必要不可欠である。RILOが様々な情報のハブとして機能し、情報交換ネットワークの原動力となることは、RILOを支えるホスト国税関である日本税関の情報分野におけるプレゼンス、そして信用度の向上に繋がるものである。そして、この効果により、自ずとホストである日本税関としても、より多くの有益な情報を享受することができるものと考えられる。3.終わりに今後、世界の密輸動向は、ますます複雑化していくことが想定されるところ、RILOには、税関当局間の連携強化のみならず、税関の枠を超えた様々な法執行機関、関係国際機関との協力関係の強化も求められることになる。RILO APがアジア大洋州地域における情報の結び目となり、アジア大洋州地域における今後の密輸対策において大きな役割を担うことが期待される。財務省関税局としても、RILO APが所期の使命を十全に果たすことができるよう、可能な限りの支援を行っていく方針である。一般的に、情報(インテリジェンス)を構築するにあたっては、単一の情報(断片情報)のみでは具体的な取締りに繋がらないケースも多いため、一見価値の低い情報であっても、できる限り多くの断片情報を収集・分析し、様々な情報と組み合わせることで新たな価値を有する情報に仕上げていくことが重要となるが、RILOの招致を機に、より多くの情報が日本に集積することが見込まれるため、日本税関として情報構築を行うにあたっても、RILOが国内に存在するという意義は大きいものと考えられる。岸田総理メッセージ全文皆さん、こんにちは。内閣総理大臣の岸田文雄です。本日は、税関や関係団体のリーダーの皆様をお迎えして、世界税関機構のアジア大洋州地域情報連絡事務所RILO東京の開所式を開催できることを光栄に思います。税関は、貿易を促進するとともに、税を徴収し、社会の安全を確保するために不可欠な存在であり、日々、様々な情報を分析し、疑わしい貨物や旅客を特定して、必要な検査を行うことで、違法な貿易取引の防止に大きく貢献しています。近年、組織犯罪グループの手口はますます高度化しており、こうした組織は、独自の情報ネットワークを構築し、税関の取締りの弱点を常に探しています。このような動きに対抗するためには、税関や関係機関がより効果的で幅広いネットワークを構築しなければなりません。 56 ファイナンス 2024 Apr.(5)RILO招致の意義

元のページ  ../index.html#60

このブックを見る