ファイナンス 2024年4月号 No.701
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ファイナンス 2024 Apr. 43齋藤通雄氏に聞く、国債を巡る資金の流れと特別会計の基礎(前編)すが、GX債を償還するために、カーボンプライシングや賦課金を導入して事業者からお金を徴収して、最終的に返済するというスキームになっているからです。経産省からすると、GX債を発行させてもらえるからといってどんどん事業をやってしまうと、事業者に対してたくさんの賦課金・負担金を課さないと返済ができなくなってしまいます。GX債の発行会計であるエネ特は経産省の所管ですが、賦課金・負担金を課す時に経産省自身が苦労することになるので、予算の規模を膨張させようという圧力はそれほど働かないと思います。それに対して、特会が批判されがちなのは、特会固有の収入がある場合、本当はそこまでの額を支出する必要がないのに、これだけお金が入ってくるのだから全て使ってしまおうとなるおそれがあるということです。特別会計に関する法律の中に、それぞれの特会で剰余金があれば、一般会計に納めるという規定は一応あります。しかし、特会の予算を査定するときに、来年の収入を見通しながら支出を削っていって、余りを一般会計に繰り入れてください、というのは簡単ではありません。特会を所管する省庁の側からすると、自分たちが使えるお金だと思っていたものを財務省にとられる、という感覚になりますから。そうしたことから、特会の固有の収入が既得権益化してしまっているケースがあり、そういう場合は支出が緩みがちになる恐れがあります。一般会計の場合はそれがない、つまり、各省庁が要求するのは歳出だけで、歳出全体に対して歳入が足りない部分は国債を発行して賄うしかないので、歳出は可能な限り切り詰めて国債発行額をできるだけ減らそうという圧力が働きます。そういう意味では、特別会計と比べると一般会計の方が、より厳しい目線で査定される、というところはあると思います。服部 GX債についてですが、債券償還の元手を調達する方法としてのカーボンタックスや有償オークションは、現時点ではまだ構想段階ですよね。そのため、一定の不確実性があるのではという意見もあります。政府がGX関連予算として2兆円超を概算要求した、という報道もありました。齋藤 詳細は現時点で具体的に決まっていないとはいえ、GX債は将来的なカーボンプライシングや事業者への負担金で返していくことになり、経産省の側でも直ちには事業を膨らませにくかったり、GX経済移行債の発行額を増やしにくかったりということがあると思います。元々GXの話を始めた時には官民合わせて150兆円投資して、その中で政府が20兆円を、先行的に今後10年で投資していくということで、これが毎年2兆円(20兆円÷10年)という数字の根拠なわけです。ただ実際に発行が始まったGX債の数字を見ると、令和5年度(2023年度)は補正で増やしたけれども1兆5千億円、令和6年度(2024年度)の当初予算ベースは6,600億円で、毎年2兆円ずつには達していません。そういう意味では支出の部分も抑制されていると思いますね。服部 GXをやるために、そこから得られる収入を一般会計に入れて財務省の経産係がお金をつけるのがいいのか、国債を発行したお金や事業収入が特会に入ってそこから返済するというのがいいのか、どちらがいいのかという問題がありますが、分けた方が分かりやすいのではないかという側面もありますね。後編に続く

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