うちの二つ目で、もう一回予算の範囲内に収まっているかをチェックするという手続きを踏みます。このような、予算を執行していく手続きについて規定している一番ベースになる法律が会計法です。服部 つまり、財政法は予算や決算策定についての法律で、会計法が予算執行手続きについての法律ですね。齋藤 財政法・会計法は主計局法規課が所管をしていて、もし何か必要があれば改正などをする、ということになります。国債の話で言うと、財政法では、国の歳出は原則として国債又は借入金以外の歳入をもって賄うことと規定していますが、一方で、ただし書きにより、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、例外的に国債発行が認められていて、この例外規定に基づいて発行されるのが、いわゆる建設国債です。財政法に書かれているのはここまでです。ただ、今の日本の財政状況では、国債の発行額としては建設国債だけでは足りなくて、いわゆる赤字国債(特例国債)を出しています。赤字国債(特例国債)を出すために、特例法が別途必要になってくるわけですが、この特例法の原案を作って国会に提出して審議してもらうという法案作業も、主計局法規課が担当する仕事になってきます。主計局法規課の仕事の一つは、ここまでお話ししたように、予算や国の会計手続きを取りまとめる財務省として必要な法律あるいはその法律の下の政省令などを所管し、改正等を行うことです。法規課の仕事としてもう一つあるのは、他省庁が作成する予算関連法案のチェックです。予算関連法案とは、予算を支出する前提になる制度を作るような法律のことで、各省庁が国会に提出するものです。先ほどお話したような予算編成・査定のプロセスの中で、主計局の予算担当者と各省庁の間で、こういう制度にしてこれくらいのお金を出しましょう、ということを決めるわけですが、それが実際に制度を規定する法律に落としこまれたときに、元々約束されていた通りの内容で法律に書かれているのか、もっと言えば、将来的に国の余計な支出が発生するようなおそれがないかどうか、各省庁の予算関連法案を審査するというのも、主計局法規課の仕事になります。服部 ちなみに、法規課係長時代はどういうことをやっていらっしゃったのでしょうか。齋藤 私の係長時代は1990年代前半で、バブルが弾けた後ではありましたが、まだ特例公債を出さずに済んでいた時代で、したがって特例公債の法律の作業もありませんでした。そうはいってもバブルが弾けた後で景気が悪化し少しずつ財政が苦しくなっていたので、一般会計の決算剰余金の半分以上を国債の返済にあてなければいけない、という財政法の条文の適用を、特定の年度については除外して、剰余金の全額を補正予算で一般会計の財源に使えるようにするための特例法を提出する、といったことをやっていました。服部 法律に関する高い専門性が必要そうですね。係長で法規課に配属になるケース、つまり、例えば財務省に入って4年目などで法規課に配属され、各省庁の法令チェックなどを担当するということもありますよね。齋藤 そういう意味では法律について親しみがある人、法学部出身者のほうが馴染みやすい仕事だとは思います。ただ法規課にいる人が全員法学部出身者かというと、全然そんなことはないですね。服部 内閣法制局という、法令をチェックする機関も別にありますよね。主計局法規課は、予算に一貫性があるかを財務省の内部でさらにチェックするというイメージでしょうか。齋藤 各省庁からすると、予算関連法案は主計局法規課と内閣法制局から二重にチェックを受けなければいけない形にはなるので面倒かもしれません。ただ、両者のチェックは視点が違うんですよね。主計局法規課のチェックは、予算編成の中で決まったことが法律・法令に正しく落とし込まれているかどうか、翌年度以降に余計な財政負担を生じさせる恐れがないかどうかが、チェックポイントとして一番重要なところです。それに対して内閣法制局は、政策的なことをチェックするというよりは、法令として表現が正確かどうか、曖昧な書き方になっていて色々な解釈が生まれないように、意図することが正確に、誤解・誤読のおそれがないように表現されているかどうかを中心に徹底的にチェックするということになります。言葉の使い方について、既存の法令との整合性などが厳しく審査されます。 40 ファイナンス 2024 Apr.
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