ファイナンス 2024年4月号 No.701
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(出所)財務省「令和5年度版特別会計ガイドブック」図表8 「総額」と「純計」の違い齋藤 たしかに特別会計について全体的・網羅的に記載されたものは、財務省の『特別会計ガイドブック』くらいしかないですね。服部 これまでのお話ですと、特別会計を理解するには、個別性のある特別会計をそれぞれ理解する必要があります。もっとも、例えば、復興関係の特別会計のように使途が単一であるものに対して、勘定が複数あるエネルギー対策特別会計のようなものもあります。特に勘定区分が複数あるものについては、時間をかけないと理解は難しいという印象があります。一個一個、個別の特会に対して丁寧に追えば理解は可能なのですが、一つ一つ個性があるので理解が簡単ではないということになるのかもしれません。齋藤 それぞれの特会について正確に理解しようと思うと、時間がかかるのはたしかですね。服部 特会が複雑とされる背景には、一般会計と特別会計がそれぞれ完全に独立しているわけではなくて、相互に関連している点もあると思います。図表8の左側が日本の財政を「総額ベース」でみたものですが、その概念として一般会計と特別会計のやり取りだけでなく、特別会計どうしのやり取りもあります。図表8の右側にあるとおり、その相互のやり取りをネッティングした「純計ベース」である場合、国の財政規模は253.6兆円(総額ベースの場合、563.6兆円)であるため、一般会計と特会間、特会同士のやり取りの合計が差額の300兆円程度となることが分かります。したがって、個別の特会の個別性を理解することに加え、特別会計間のやり取りがあるというところは、見逃されやすいポイントかもしれません。結局、特会について理解しようと思うと、『特別会計ガイドブック』を読みながら、それぞれの特徴について丹念に追うということですね。ただ、頭から読もうとしても、やはり淡々とした説明が続き必ずしも分かりやすいとは言えない中、別途分かりやすい書籍があるわけでもない、というのが現状だと思います。したがって、特別会計に関心を持った方が、今回の「ファイナンス」の文章を読んでもらい、その後『特別会計ガイドブック』などを参照し、特会についての理解を深める第一歩としていただければと思っています。私がしばしば聞くのは、財務省の職員にとっても、特別会計は必ずしも簡単ではなく、その制度を深く理解するには、主計局法規課での経験が必要であるということです。齋藤様は係長時代に主計局法規課をご経験されていますが、主計局における法規課の位置付けについてお聞きしてもいいでしょうか。業務としてどういうことをやっていらっしゃったか、その中で特会がどう関わってくるか、ということをお聞きしたいです。財務省における特別会計と主計局法規課服部 前回のインタビュー(齋藤・服部, 2023)では、財務省の中でも、特に理財局の役割についての話をしていたわけですが、財務省には予算を担う主計局があります。主計局は、厚労係や文科係などの形で、各係が各省庁の予算の査定をするという構図です。この主計局の中に法規課が存在し、予算などに関する法令を扱っているところだと理解しています。 38 ファイナンス 2024 Apr.ÿ

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