フィナンシャル・レビュー掲載の全論文は、財務総研ホームページから閲覧・ダウンロードいただけます。https://www.mof.go.jp/pri/publication/■nancial_review/index.htm過去の「PRI Open Campus」については、 財務総合政策研究所ホームページに掲載しています。https://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/index.htmlファイナンス 2024 Mar. 87POLICY RESEARCH INSTITUTE, Ministry Of Finance, JAPANPRI Open Campus ~財務総研の研究・交流活動紹介~ 29れるにしても時間がかかる。そうすると少子化問題はすぐには改善されないし、人口もしばらくは減少していくことになります。高齢化はある程度で止まるのかもしれませんが、いずれにしろ人口は減っていくということで、ではその中で今の財政はもつのかという持続可能性の話になります。そこをもたせる、つまり人口が減っても日本が弱くならない、逆にその状態でも強くなる、そのための政策は何なのかということがとても気になっていて、この議論に役立つようなテーマが面白いと思っています。まず一つ目は、人口減少とともに歳入を減らさない構造を追求することです。通常、人口が減っていくと税収も歳入も減っていく場合が多いと思いますが、1人当たりの税収、1人当たりの所得を向上させていけば、人口が減ったとしても歳入はそれほど減らなくて済むということになります。そのためにどうすべきなのか。二つ目は、人口減少とともに歳出を減らせる構造を追求することです。歳出が人口減少とともに比例的に減ってくれればいいのですが、規模の不経済性によって1人当たりの行政コストは人口減少とともに上昇するのが一般的です。そのなかで、1人当たりの行政コストを増やさないためにどういった仕組みがあるのか。この二つが実現できれば、人口減少の中でも財政悪化はある程度食い止められるのではないかと考えています。あらゆる分野でこの視点での対応が必要で、各分野でさらに詳しい分析ができると思います。つまり、税収においては税目と人口の関係、歳出においては、それぞれの分野の歳出と人口の関係を整理することが必要でしょう。歳入に関しては、人口が減っても歳入を減らさないためには、1人当たり所得を上げることが必要で、教育を通じて生産性を向上させる、働き方改革を通じて労働の生産性を向上させることができるかが重要でしょう。これを実現できれば、所得も増えて税収も増え、人が減っても税収の減少を食い止められることになります。また、賃金をいかに上げるのかも大事だと思います。歳出に関しては、人口が減っても1人当たりの行政コストを増加させないためには、まず、コンパクトシティが考えられます。また、できるだけインフラの維持コストを節約できるように、必要なインフラだけを更新するといったような仕組み作りも意味があります。さらに、働いている人の所得で社会保障の高齢者向けサービスなどを賄っているとすると、人口が減るとその制度がもたなくなってくるので、勤労世帯が高齢者世帯を支える社会保障の仕組み自体の改革も、人口減少のもとで財政を維持するために必要だと思います。財務総合政策研究所
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